雲母の里


広い範囲に脈石が落ちている、規模の大きなペグマであった。
人が掘った雰囲気はなかったし、とにかくも大量の石英長石雲母の破片を見て
狂喜しない石好きはいないだろう。
喜び勇んで、あちこち掘った。

なぜ、あちこちなのかと言うと、どこからも結晶のきっちりとした石が出なかったからである。
長石はまあまあの大きさが出たが、平ペタが多くて今一歩。
石英は一面だけと言ったものが少量。そして、水晶と言えるものは、
みかんサイズの晶洞からでも出てきそうなサイズの物が、たった一本だけ。

そんな中で、しっかりとした結晶の形を示した唯一の鉱物が雲母であった。
ただ、掘っているとどうしても雲母は薄く劈開をしてしまう。

それらは、無造作に投げ出されて
まるで、冬の凍った湖の穴釣りで釣り上げられたワカサギの様に
開けられた穴の周りに散らばって置かれる事になる。

そしてこの地は、雲母の里となった。