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2019年度
      
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 【生態系の順応的管理】

生態系は複雑で,絶えず変化し続けているものです。また,いくら調査しても,そのすべてを把握し,理解することは困難です。ですから,生態系の健全な働きを損なわないようにするためには,生態系の変化を常に把握(モニタリング)しながら,その変化の状況に応じて,管理や利用の方法を柔軟に修正していくことが大切です。これが生態系の順応的管理と呼ばれる考え方で,生物多様性条約(1993年に発効)第5回締約国会議(ナイロビ,2000年)で合意された「エコシステムアプローチ」の原則の一つです。
わたしたちは,乙女高原の自然を次の世代に確実に譲り渡すために,この考え方にのっとり,行政(山梨市・山梨県)と協働して乙女高原の自然(生態系)のモニタリングと管理を行っています。
なお,毎年5月に行う遊歩道づくりや11月23日に行う草刈りボランティアも,生態系の順応的管理の一環と言えます
(参照:生物多様性政策研究会『生物多様性キーワード事典』中央法規,2002)


 ■CASE 2   シカ柵の設置   since2010  

  【シカと乙女高原】


 「どうも草原の(特定の)植物が減ってきているなあ」と感じたのは21世紀に入って少したってからです。まず,春先にあれほどニョキニョキと生えていたアマドコロや,夏の草原を彩ってくれたオオバギボウシが,次にマツムシソウやヤナギランが。
 森の中では,はじめはマユミの幹が,次にリョウブが,今では,ウラジロモミやミズナラまで皮を剥がされるようになってしまいました。森の中に剥がされた白い幹が林立する様子は,まるでたくさんの骨が立っているようで不気味です。
 そして,草原でも,森の中でも,たくさんのシカの糞が見つかるようになりました。

 同じような傾向が大菩薩や三窪高原,櫛形山でも見られること,どうもシカが増えていることがその原因らしいことが情報交換の結果,分かりました。

 今まで自然保護問題というと,遊歩道をどうつくるか? 森林の管理をどうするか? など,「自然」とはいえ,「対人間」の問題ばかりでした。シカ問題の背景にももちろん人間の存在があって,人間がその原因を作っていることは間違いないのですが,我々が直面しなければならないのは「シカ」という「野生動物」つまり自然そのものです。対応は,じっくり考えて,しかも,素早く行わなくてはなりません。

 間違った知識を前提としては,間違った対応をとってしまいます。シカについて,みんなで勉強する機会を作りました。
 
2007年1月の乙女高原フォーラムは「調べることで見えてくる,調べることが守るにつながる」をテーマに行われましたが,ゲストの南正人さんが「調べる」ことの例として挙げられたのが,ご自分がライフワークにしていらっしゃる金華山のシカでした。南さんとは,これを縁に,シカ問題について情報交換させていただきました。
 
2008年3月の座談会では,櫛形山の森林科学館の石原 誠さんに「シカのウンチから植生を考える」をテーマに話題提供していただきました。シカが櫛形山の植生に与える影響についてお一人で調査を始められたというお話でした。
 
2009年1月の乙女高原フォーラムでは,東京農工大の星野義延さんから関東・中部地方の何カ所かの20年前と今の植生の多様性を比べた調査結果を見せていただき,シカの影響の大きさを驚きとともに認識させていただきました。
 
2010年1月の乙女高原フォーラムでは,「まずは相手を知ることが大事だ」という観点から,県環境科学研究所の吉田 洋さんにシカについての基礎知識についてご講義いただきました。シカは増えやすい動物であり,頭数が増え,それまで食べていた餌資源がなくなると,他のものを食べるようになる。草からササ,木の幹,そして,落ち葉まで。次に,シカ問題に取り組んでいる先進地として櫛形山の事例について県森林総合研究所の長池卓男さんにご報告いただきました。
 どれも今後の乙女高原での取り組みに参考になることばかりでした。

 
          シカ柵の設置作業

 その後,麻布大学の高槻成紀さんの研究室による調査研究が始まりました。シカ柵の中は外に比べ,植物の丈が高くなり,花の数も多くなることが判りました。

    

  
乙女高原の生態系や生物多様性にとって,シカも大切なメンバーの一員ではありますが,あまりにも多くなり,自然のバランスが崩れると・・・


  
シカに皮を剥がされてしまったマユミ。このように皮を剥がされてしまう樹木が種類・本数とも増えている。









【シカの順応的管理その1】
2010年5月,県や市と相談し,草原内にシカ柵を設置しました。遊歩道づくりの日に行い,多くのボランティアにも一緒に作業していただきました。
 一つは周囲60b,もう一つは25bのシカ柵です。シカ柵の外(シカの影響あり)と内(シカの影響なし)で植物の生育や開花がどう違ってくるかを調べます。景観が悪くなってしまいますが,ご理解ください。
 
        

 ■CASE 1  イ タ ド リ 刈 り   since2001

  【イタドリと乙女高原】
  (乙女高原メールマガジカン24 2001.7.30より)

 イタドリ(タデ科)。すかんぽとも言われ,春先はアスパラガスのような太い芽をにょっきり出します。太い芽は他の草花に先駆けて大きくなり,葉を広げてしまいます。日光をさえぎられてしまったまわりの植物にとっては『恐怖の日傘』でしょう。

 夏,小さな花をたくさんつけ,秋にはたくさんの実をつけます。たねには小さな翼がついていて,風に乗って遠くまで運ばれます。

 このように,遠くまで莫大な数の子孫を飛ばし,しかも,ある程度大きくなると,春先に他の植物に先駆けて成長し,葉を繁らせてしまうので,一緒に生えている他の植物にとって大きな脅威となる,競争力の強い植物だと考えられます。
 じつはIUCN(国際自然保護連合)の
『世界の外来侵入種ワースト100』の中にクズやホテイアオイとともに取り上げられているほどの植物です。

 さて,以前に比べ,乙女高原の草原の中にイタドリが目立ってきました。ここ3・4年,イタドリしか生えてないようにみえる箇所も出てきました。しかも,その面積は明らかに

年々広くなっています。

 イタドリという1種類の植物ばかりが生えているような状況は,ぼくらが打ち出した草原エリアの保全目標とはあきらかに違います。ぼくらの保全目標は,「多種多様な植物がモザイク状に生育している」状態です。

 では,ぼくらはどうしたらいいのでしょうか?

 今,イタドリが増えているといっても,それは一過性のもので,放っておけばやがて減少し,ある程度のところで落ち着くものなのでしょうか?

 それとも,放っておけば,このままどんどん増えてしまい,イタドリ草原になってしまうのでしょうか? だとしたら,イタドリだけを選択的に刈り取る必要があるのでしょうか?
 いいえ,たとえイタドリ草原になったとしても,黙って見守るべきなのでしょうか?

 また,もし,刈り取るとしても,刈ったイタドリはそこに放置しておくのがいいのでしょうか? それとも,草原から外に出してしまったほうがいいのでしょうか?
 そもそも,イタドリが増えているということは,何を意味するのでしょうか? たとえば,湖沼の富栄養化ということが問題になっていますが,イタドリが増えているということは草原が富栄養化の傾向を示してということなのでしょうか?

 

    この写真に写っているのは全部イタドリ。
    このままでは乙女高原はイタドリ高原に!?


 
アスパラガスのようなイタドリの若芽。他の植物より少し遅く現れるくせに,あっという間に背を伸ばし,まるで傘を開くように葉を茂らせ,他の植物を日陰にしてしまう。



イタドリの若い実。こんなにたわわに実らせ,しかも,たねのまわりに膜のような翼が付いていて,風に乗って遠くまで運ばれる。



※メールマガジンでの情報交換
 乙女高原で増えすぎたイタドリをどうするかについて,メールマガジン誌上で,熱い情報交換を行いました。興味がありましたら,関係のバックナンバーをお読みください。

イタドリ退治是か非か(24号2001.7.30)
フィードバック管理(26号2001.8.14)
草刈りがイタドリを増やす
   (27号2001.8.16)

メマツヨイグサが…(28号 2001.9.2)




【イタドリの順応的管理その1】
2001年7月,県や市と相談して,草原内のイタドリが優占している箇所10平方メートル内のイタドリを根元から刈り取り,運び出すという実験を行いました。
大失敗でした。
すでにイタドリは大きく葉を広げていて,その下はほとんど草が生えていない状態でした。2週間後に,刈り取った場所に行ってみたら,草原にもともとあった草花ではなく,アレチマツヨイグサのロゼットが大きくなり,目だって見えました。


  【イタドリの順応的管理 その2】
 2003年6月15日,イタドリ群落内に杭を打って10メートル×10メートルのコドラートを2カ所設置し,コドラート内だけイタドリをできるだけ根元から刈り取り,その後,コドラート内の植物群落がどうなるかをモニタリングしました。

 ●6月に行った理由
1.イタドリがニューッと成長し,葉を広げて光合成を行い始める直前に刈り取るのが,イタドリにとってダメージが一番大きいだろうと考えた。
2.イタドリが葉を広げる前に刈り取れば,他の植物が順調に生長できるものと考えた。

※根ごと取ってしまうのでなく,根元で刈り取ったのは,イタドリの根を抜くときに,他の植物にもダメージを与えてしまうから。
※取ったイタドリは運び出しました。

 ●実験の結果
 期待通り,「6月に」「根元で刈り取れば」イタドリの生長を十分抑え,他の植物への悪影響を小さくできることが分かりました。
  →実験の詳しい状況はこちら



  【イタドリの順応的管理 その3】
 2003年の実験が成功だったので,2004年から範囲を広げて刈り取ることにしました。草原内のイタドリが多い場所2カ所を設定し,杭を打って測量し,面積を出しました。「上区画」1,796u,「下区画」は1,165uでした。その区画内のイタドリを刈り取り,持ち出して重量を計りました。
 また,2004年だけ,刈り取ったイタドリ10sを持ち帰り,十分乾燥させて重量を計ったところ(乾燥重量)3.2sでした。つまり,イタドリの体の68%は水分だということです。
 なお,多くの方にこの作業を知ってもらいたいということもあって,2004年から参加者を公募して実施することにしました。


年月日 参加者 上区画
1796u
下区画
1165u
合計 面積あたりの重量
第1回 2004.6.12 22人 297.8s 181.0s 478.8s 0.16s/u
第2回 2005.6.11 28人 97.5s 73.5s 172.0s 0.06s/u
第3回 2006.6.17 29人 63.2s 85.0s 148.2s 0.05s/u

 表を見るとわかるように,年々イタドリの量が減っています。刈る時期によってイタドリの伸び方がだいぶ違うということはありますが,このイタドリ刈りによって,イタドリの繁殖をある程度抑えられたと評価しています。


  
【イタドリの順応的管理その4】
 2007年の「第4回イタドリ刈り」は,2007年6月16日に行われました。前年までの実験で,イタドリ刈り作業が十分効果のあることが分かりましたので,今回は,区画を決めたり,重量を測ったりする作業を省いて,とにかくできるだけ刈り取り,運び出すことにしました。
 参加者は32名。入梅後だというのに,晴天に恵まれ,作業はスムーズに進行しました。
  

    写真提供:菊地猛三さん
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