◆虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、動脈硬化や血栓で心臓の外壁を走る、内腔2mm~4mm程度の3本の血管の内腔が狭くなり、心臓に酸素・栄養が十分いきわたらなくなり、運動やストレスで前胸部などに痛み、圧迫感、痛みといった症状を生じる状態です。
虚血性心疾患の症状は様々なものがあり、自覚症状がなく健康診断の心電図異常で初めて指摘されたり、歯や顎の痛み、左肩の痛み、心窩部痛を感じることもあります。一般的には運動中や、強いストレスが、かかった時に、前胸部、背中に痛みや圧迫感を生じます。前兆なく発症し突然死を引き起こすことがあります。
♦心筋梗塞症
以前は心筋梗塞の死亡率は30%を超えていました。カテーテル等の治療が発達し、心筋梗塞症の病院到着前の死亡率は14%程度、
入院後の死亡率は7%と言われています。しかし、これも地域差、搬送される病院により差はあります。
厚生労働省研究班による、外傷を除く、院外死亡の調査では、死因の34%が心筋梗塞で、その他の心臓病18%、大動脈瘤12%、
くも膜下出血14%をあわせると、循環器疾患が約80%を占めています。
急性心筋梗塞を発生すると、胸痛の後に心停止を起こします。胸痛から心停止までの時間は1時間以内が約86%そのうち瞬間死が
25%であり、1時間以内に専門病院に搬送されることが重要です。
また、胸痛のない心筋梗塞があります。糖尿病や高齢者の方に起こりやすいといわれています。
心筋梗塞の原因は冠動脈(心臓の外壁を走る3本の心臓に酸素を送る2㎜~4㎜の血管)にコレステロールなどの粥腫(プラーク)と呼ばれる。こぶが沈着して、突然破綻すると、冠動脈内に、血栓が出来て、冠動脈が詰まってしまいます。
すると、冠動脈より、血液と酸素を配分されていた、心筋は壊死を起こし、危険な不整脈を発生して、心停止を起こします。
かつてはプラークが、冠動脈いっぱいになり、詰まると考えられていましたが、最近では、冠動脈の4分の1程度(25%)以下の粥腫(プラーク)狭窄からの、血栓形成による、心筋梗塞が多く発生することが、分かってきています。
心筋梗塞の原因となる、粥腫(プラーク)の発生は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、喫煙、ストレスが大きな原因です。これらの疾患は痛みを伴わず、最初は症状はありません。これらを予防、治療することで、突然死を回避できます。
糖尿病、慢性腎不全も大切な原因ですが、これだけで、安心せず、全てを含めて、観察、治療していくことが、健康寿命を守るために重要なことです。是非、ご相談ください。
◆高血圧症
高血圧症とは、血圧が高いという病態です。たまたま測った血圧が高いときには高血圧症とは言い切れません。
高血圧症とは、繰り返し測っても血圧が正常より高い場合を言います。繰り返しの測定で診察室血圧で最高血圧が140㎜Hg以上、
あるいは最低血圧が、90㎜Hg以上であれば高血圧と診断されます。
血圧は常に変動しています。通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高く、夜間睡眠中は低くなります。また冬は夏より高くなります。心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、大動脈解離、腎硬化症、眼底出血、心不全、等 怖ろしい疾患の原因となります。
血圧を正常に保つことが、とても大切です。
◆不整脈
不整脈とは、脈がゆっくり打つ、早く打つ、または不規則に打つ状態をいいます。
1分間に50以下の場合は徐脈、100以上の場合を頻脈といいます。不整脈には、それを感じない人や、のどや胸の不快感やめまい、
動悸またはごく短い時間の痛みとして感じる人もいます。放置しておいても問題ないものや、放置しておくと突然死を引き起こす
ものもあります。
不整脈の診断が、とても重要です。
◆心不全
心臓は全身に血液を送り出すポンプとして1日10万回程度、休むことなく働いています。
心不全とは、ポンプ機能が低下して息切れやむくみが起こり生命が維持できなくなる病気です。原因や自覚症状は人によって様々です。
坂道や階段で息切れがしたり、疲れやすく なったりします。腎臓に流れる血流が少なくなり、尿の量が減り、足の甲やすねにむくみが出たりします。心臓の血管が詰まってしまう心筋梗塞や狭心症、動脈硬化や塩分の摂り過ぎなどが原因の高血圧や、心臓にある
4つの部屋を分けている心臓弁の障害による弁膜症、心臓の筋肉に異常が起こる心筋症、心拍のリズムが異常になる不整脈、先天的な心臓の病気など様々な疾患が原因となって生じます。原因疾患の精査と治療が、たいへん重要です。
◆糖尿病
糖尿病とは、発生初期は食後高血糖のみで、自覚症状が乏しい場合がありますが、高血糖がずっと続くと、口渇、多飲、多尿、体重減少といった症状が現れます。高血糖を放置して全身の血管が障害されると、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、透析、失明、足壊疽、
神経障害といった合併症が起こるとされています。また糖尿病が認知症に関係があることが明らかとなっています。
インスリンを分泌する膵臓が障害されてインスリンが出なくなる1型糖尿病、食べ過ぎや運動不足、肥満、加齢によりインスリン抵抗性、インスリン分泌低下に関係して血糖が上昇する2型糖尿病があります。
また、膵臓癌などの悪性腫瘍や甲状腺ホルモン異常などの内分泌疾患により糖尿病を発生することもあります。
どのタイプの糖尿病かを診断し、適切な治療を進めていくことが重要です。
◆慢性腎臓病
腎臓病は、むくみや透析の原因として知られています。腎臓の機能低下や蛋白尿が末期腎不全、透析の原因になるだけでなく、
循環器病や死亡の原因にもなります。そこで腎臓病を早期に発見して治療することにより、腎不全や循環器病の発生を阻止することを目的に慢性腎臓病にならないよう治療を進めていくことが重要です。
腎臓病と循環器病は互いに影響しあって悪化させている悪循環の関係にあります。原因としては高齢、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、喫煙などは共通した悪化因子です。腎臓病によって老廃物が蓄積し、カルシウム・リン代謝に異常をきたすと動脈硬化や血管石灰化が進展します。同様に高血圧のコントロールが悪化すると心血管への負担が増大し、心肥大、動脈硬化を進展させます。
腎不全に伴う貧血も循環器疾患に悪影響を与えます。両疾患の関わりを理解して、治療を受けることが大切です。