秋の出会い



土砂崩れの為に通行止めになっていた道を、私は車を捨てて状況を見に行った。
そして、ショートカット出来るルートがないかと、見知らぬ林道を入ってみたりした。
結局は、知らない沢の風景を楽しんだだけで終わり、誰も通らぬ初秋の静かな道をまた戻った。
しかし、眺めの良い場所で休憩を取っていると、向こうから誰かがやって来た。
私はかなり驚いたが、それは相手も同じだった様だ。
そして、お互いに認め合うと、今度はちょっとした笑いがこみ上げて来た。友人だった。
どうやら似たような事を考えたらしい。

訊けば、別の山からの帰りにちょっと立ち寄ったと言う。それから、とても大きなガマが開いたと言って、
新聞紙に包まれた、幾つかの立派な美しい水晶を見せてくれた。どれもが素晴らしいクオリティであった。
友人はその時の武勇伝を、石を手に楽しそうに話していたが、突如、
これあげると言って、先ほどの包みの中から、大きめの一つを差し出してきた。
見事な透明感の備わった立派な水晶を前にして、私はその気っぷの良さに感服した。


☆☆長野県小川山産