笹の根
初めての産地行きだった。
多くの車が停まっており、ほとんどの人は出発する直前で、私が一番遅く着いたようだった。
まずは人の多さにびっくりした。人の多いのは苦手だった。
そして産地に着くと今度は穴の多さに驚かされた。
まさにモグラ叩きのゲーム盤を見るようだった。そして逆に人が見当たらないのを不思議に思った。
各自が穴の中で頑張っているから、人がどこにいるのかは、離れた所からは分からないのだった。
どこを掘れば良いのか見当がつかない私は、方々の穴を尋ね、そして周りを広く歩いた。
結局のところ私はその日の多くの時間を、友人が掘るのを見る事に費やした。
産地の様子に呑まれたからでもあった。
彼の掘り方は周りの人とは少し違っていた。長い日数を掛けていたからだろう。
斜面を真っすぐ水平に掘っていたから、結果、まるで大きな壁を相手にしているといった様だった。
そんな最中にコロッと出て来たのがこの石である。
あげると言って手渡ししてくれた。そして彼は上を見上げた。
なぜ、笹の根元から出て来るのかという疑問と、その不可解さから来る驚きが、その動作から感じられた。
採集の感動はその驚きの一瞬にあるのだった。
☆☆山梨県水晶峠産