緑の館
自然は自分の外だけでなく、内にもある。
*
緑の脈石が多く落ちているなあと、興味が湧いた場所を掘り始めた。
多くの脈石と共に、数本の小さな水晶の単晶が出て来たので、見立てが正しかったことを喜んだが、
しばらくして、手のひら大の平たい石を掘り出した。
また出たかと思ったが、パッと見たところ、ほとんど全体がすっぽり泥に覆われた中に
一部分だけ緑色の結晶が覗いている。
今までの経験から緑簾石だと推測出来たが、ひっくり返して見ると、
そこには小さな水晶が3本くらい突き出て付いている。
こっちの方が価値がある様に思われたから、そちらを上にして脇に置き。置き忘れなければ良いなと思った。
どうせ庭石になるだろうけど、とりあえず洗って見たかったからだ。
そして運良く忘れずに、持ち帰った。
だが、何か気に掛かっていたのだろう。
家に着くと真っ先にこの石を取り出して、蛇口に付いているホースの先を指で潰して、水をスプレー状にして吹きかけた。
そして現れた模様を見てビックリ仰天、驚いた。
今まで緑簾石の結晶は、水晶や小石の片隅に、ほんのちょっと付いているだけの物しか見た事がなかったからで
ほんと、唖然としてしまった。
ヒノキの葉の様な緑色の結晶が、不思議と有機的な姿でびっしりと生えている。
それはまるで、毛足の長い絨毯の様で、水晶がその中に埋もれているのも良い。
最初に少しは価値があると思えた面が裏であるのは、石の断面からうかがわれる。
まったく予想だにしない展開は、自然の中で遊ぶ時の醍醐味である。
* * *
この後に、更に思いがけない出来事が起きた。
上の文を書いても、まだ何かしら引っ掛かっている感じがずっとしていたが、
一週間ほど経って、ふと思い出したことがあった。
「緑の館」 だった。
(この文章のタイトルは当初、「緑の絨毯」であった)
この本は昔、少年少女のための要約版と思うが、中学生の時に読んで、
都会から来た主人公と森の中に住む少女とのロマンスや話の展開が、強く心に残ったが、
年を重ねるうちにすっかり忘れていた。
それが50年ぶりくらいに、突如、蘇ってきたのだ。
どうしてだろう? 自分の付けたタイトルに反応したのか、深々とした緑簾石の
結晶の広がりが緑の森に繋がって、そこから連想したのか、記憶の不思議である。
石の採取にまつわる驚きよりも、こちらの方にずっとずっと強い衝撃を受けた。
今調べてみると、オードリー・ヘップバーンがヒロインを演じている映画があるそうで
なんとヴィラ・ロボスが音楽を担当しているらしい。
いつかそのうち観てみたいと思う。