乙女幸山
初めてここを訪れたのは、2004年、7月の事だった。
その頃はゲートの左に、鉱山の所有者を示す小さな看板が立っていただけで、愛好家は自由に出入りしていた。
インターネットも使えず、地図でその位置を知っただけの私は、幼かった子供と一緒に
アプローチの林道を歩いた。それは、とても長く遠く感じた。
それでも、鉱山から運んだと推測出来た、多量の石英を含む岩石が道に敷いてあり、
それを見ながら歩いていると、気持ちがどんどん高揚してきた。
今でもその日に歩いたり掘ったりした時の事を、鮮明に覚えているのは、
鉱物採集を始めて2回目という、最初期だった事もあるのだろう。
この石はその時に採集したもので、ビギナーズラックの見本の様な結果だった。
ここは夏のイメージしかない。その日もそうであった。
一帯は樹木が切られて開けた場所が多く、
地形的にもドラマチックで、殺風景な所でもあり、暑さを余計に強く感じたものだ。
鉱山という名の通り、廃屋や、置き去りにされた重機、ワイヤーなども多く、
かつてここで大勢の人が働いていたという感覚が、体の中を突き抜けた覚えがある。
しかし今、改めて思い起こしてみると、一番懐かしく目に浮かぶのは、
期待に満ちた、幸せな場所へと導いてくれる、日差しの強い、少し下っていく、
あの白い道なのである。
★★山梨県乙女幸山