準備万端


やや松茸形をしており、錐面の一つには触像が現れて
三角形に大きな窪みが出来ている。
化学変化での腐蝕を受ける時には、結晶の一番弱い部分から溶けるそうで
錐面は水晶の一番弱い部分らしい。
良い大きさではあるが、透明度ゼロ、照りゼロと、ヘルシービールの様だ。

採集日の夕方、暗くなってから産地で会ったベテランに見せた時に、
彼はリュックから懐中電灯を取り出して、透かして観察した。
この形状は紫が入るパターンが多いとの事で、
「紫が入る準備満タン」の石というコメントが頭に残っている。
しかし、これは私の聞き間違えであろう。本当は万端(整う)だから。
でも、その言葉の方が、石をとてもよく表している気がしている。
もっとも実際の石は、欲目には紫っぽく見えても、実際には普通の煙色である。

女神晶洞と名付けた晶洞の主で、ここからは、「長い石」での長石など
収穫量は多かったものの、全ての石で照りは無く、変な形の水晶が多かった。
それでも、小さな逆松茸形水晶の一本には、先端にわずかに紫の入った結晶があった。

山梨市甲府市黒平