魚の骨
とても小さな群晶。
全体が五百円玉に載るくらいで、群晶という語感に負けてしまうが、
25本くらいの結晶が寄せ集まっている、立派な物だ。
私が取り組んだポイントは、完全に真砂化した場所なので、群晶はめったに採集出来なかった。
その少ない中にあって、ほぼ最小の大きさだが、最大の本数から構成されている。
「自由の女神」の石と同じ様なノリだが、この石には、母岩と言えそうなものはなく、
ただ、寄り集まり、重なり合っている。
良く観察すると、欠けがどこにも見当たらないから不思議だ。
採集した時の記憶は全くないが、完全に真砂化したところでも
ごく稀に空洞が認められることがあり、ひょっとしたら
そんな中から出て来た物かも知れないが、
照りは最高で欠けは皆無だから美しい。
しかし、いかんせん、小さい。
これが10センチくらいの石ならば良いのだが、
実物を見て連想するのは、皿の脇に寄せられた、魚の骨の集まりである。
それはともかく、この石を見ていて感じるのは、結晶の不思議だ。
人工水晶を作る時には種石が必要だそうで、種石よりも太い結晶は育たないらしい。
つまり、結晶の起点というのものを、人工で作れていないのだと推測するが、
この石にはその作用が同時にいくつも発現したのだろう。
一般によくある群晶とも、どことなく異なる印象がある。
★★山
梨県水晶峠産