白い道の思い出
採集を初めてすぐの頃だったから、その記憶は強く残っている。
まずはとにかく、不安が大きかった。
山歩き自体に慣れていなかったから、歩いているだけでも怖かった。
クマが出て来たらどうしようとか、蛇を踏まないかとか、そんな事を頻繁に考えていた。
しかし、道には普段目にすることのない白い石が点々と落ちていて、
それが鉱山に近づくにつれて増えてくると、気持ちは自然に高まっていったものだった。
白い石が石英であることはすぐに分かったから、それじゃあ、水晶も落ちているのではと
しっかりと下を見ながら歩いたが、そんな時に見つけた。
金色に輝くそれは一瞬、金かと思われたが、まさかそれはないだろうと、すぐさま思い返した。
爪でかじっても硬いし、いいとこ、黄鉄鉱だろうとなった。
この道は暑かった印象しかない。
陽差しがたっぷりと注ぎ、まるで高原を歩いているかの様に空も広くて気持ちよかったが
行きは気が急いていたからであろう、それが下り坂であるのに気がつかずにいて、
帰りになってはじめて、上り坂である事に気がついて驚き
疲れた体でだらだらと歩いた事も、良い思い出である。
乙女幸山産