採集紀行・青空の下で 




待ち合わせ場所で車から降りると、気温が低くてあまりにも寒いので、日向に移動して話をする。
出発時は風もあって余計に寒かったが、歩き出してしばらくすると体が温まり、
風も弱まって厚着が無駄になるが、きっとまた夕方は冷えるだろう。
私にはかなり久しぶりの方面だが、見 覚えのある場所もあって、ちょっとした懐か しさがある。
そのうちに友人は私の知らない道に入るが、すっかりと葉が落ちて視界の効く森は気持ち良い。

ポイントに着くと、時間を無駄にしない彼はすぐに掘り出すが、私は周りを一回り。
堀跡はいくつもあるが、落ちているペグマの破片はかなり少ない。
そしてまた戻ってくると、私も適当に掘り出す。
何回か場所を変えるうちに、スコップの先がカチャカチャと鳴って、
ようやくペグマの混じる場所に当たる。

そのうちに、あっと、思わず大きな声を出してしまう。
その声に反応して彼はこちらを見るが、良い石が出たのではないから、ちょっと恥ずかしい。
なんとびっくり、カエルが出たのである。
ここは沢からかなり高度差があろうと思われる斜面なので、驚き桃の木だ。
幸いスコップには当たらなかった様で怪我はしていないが、
手のひらの上で、ひどく迷惑そうにモニョモニョと緩慢に動くだけで、逃 げる元気のないのは当然の事。
きっと冬眠に入っていたのだろう、山のカエルはこんな所で冬眠するんだと初め て知る。
非常に申し訳なく思って、写真を撮ってからすぐに、他の良さそうな場所に落ち葉を敷いて丁寧に埋める。
きっと積雪の少なさそうな、陽当たりの良いこの斜面を選んだのだと思うが、
どうやってそんな場所を探すのか、すごい感覚だと感動する。
このカエルが無事に冬を越せれば良いのだが・・。
やれやれと思って掘りを再開すると、今度はセミの幼虫である。
またかと思うが、これも丁重に埋める。
セミもきっと暖かな斜面が好きなのに違いない。

石はと言えば、脈石の石英は極わずかでしかも小さく、
長石の結晶は一度目にしただけという、今までの経験にないパターン。
だから掘っていると、予告なしに割と大きめの水晶が突然ポロっと出てくる。
ここが潰れたガマなのか、上から流れて来たものかもはっきりとしない。
出て来た4つの水晶に四周完全な物は一つもなく、頭の一部がどこか当たっている。
成果としてはイマイチだが、友人はもっと出ない様で、最後は私と並んで同じ脈を追うと
ちゃんとした無色透明の美しい水晶が一本出たものの、このポイントからすれば小振りらしい。
お互いに疲れた様子になり、掘っているところがまっすぐ横に並んだタイミングで終了する。

帰りは来た道を辿らずに、探査を兼ねてガレを降り、その後は夕方の風が吹く寒い中を歩く。
秋のせいなのか、周りは驚く速さで暗くなり寒くなっていく。
それでも車の所には風が当たらず、なんとか外で過ごせそうなので、
お湯を沸かしてヘッドライトの下、二人でカップ麺とお汁粉を食べながら、
暗くなる山と共に過ごして、真っ 暗になった頃に彼と別れる。






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