採集紀行・青空の下で 




山には多くの人が繰り出していて驚くが、自分もその中の一人である。
近年では一番多いと感じられるのは、社会情勢の反映だろう。
個人キャンパーよりもグループが多いようだ。きっと山もビックリしているだろう。
新緑の山は、私の好みからすればやや遅く、樹種の違いによる色の相違が目立たない
鮮やかな緑色となっているが、それでもこの季節ならではの爽やかな開放感がある。

ここに来るまで森を走っていたとき、季節の巡りを感じられて嬉しい気持ちが込み上げて来た。
これは春だけに感じる想いではないだろうか。
春は新しい一年が迎えられたような喜びをもたらす。そして
今を迎えることの出来なかった友人、知人をちょっとの間だけ思い出す。

今日は車の脇で昼食を食べて、その後しばらくは、野鳥の声を聞きながらのんびりウトウトしていたが
気づいて時計を見ると、何と2時である。
それでも、なぜだか時間を無駄にしたという思いがしない。
頭上に雲は全くないが、一箇所だけ山の肩に出ているところがある。
ここに到着した時にもあった所に、今もあるのが面白い。
風向きとか地形が関連して、そこだけに雲が湧き出るのだろう。
小さなヤドリギが二つ。林のかわいい飾りのようだ。

車で移動して山に入る。
時間は少ないが今日の体調にはちょうどよいだろう。
林をしばらく歩いていると、何となくペグマの存在を感じるところがある。
石英長石が落ちているのではないが、単なる花崗岩とは違う、ちょっと荒い、微妙な感じの岩が
いくつか転がっているのに興味を覚えてその下を掘ってみると、時折石英が出て来るではないか。
問題はこの先である。ここが上から落とされた土砂の堆積であるか否かの判断がまだ出来ない。
すぐ上は掘られたようにも見えることから、浅く掘りながら上がっていくと
あるところで雰囲気が変わって、ただの真砂っぽい地質になる。
上から落とされた土砂ならば、同じように石英が混じっているはずだから、上からではなさそうだ。
下に戻って、この辺りかというところの灌木を取り除いて、少し深く掘ると、
黒っぽい土と共に、長石の結晶が出てくる。
当たった!

・ ・ ・

休憩を挟んでしばらくやったものの、結局は流れるペグマタイプで、
水晶と呼べそうな石は一つも出ず、電気石が絡んだ長石が数個、やや厚みのある雲母、
やはり電気石を伴った、煙って透明度もあるものの、1面か2面しかない石英がいくつかであった。
それでも、新緑の山での時間は、格別なものであった。



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