採集紀行・青空の下で

陽射しも静かな苔むした森
今日もまた、友人の誘いで山に行く。
彼の希望する出発時間に間に合う自信がなくて現地集合にするが、
一人で気兼ねなくマイペースで歩けて、これはこれで良いかもなと思う。
森で声を発する生き物はとても少なく、無風で葉擦れの音もしないので、とても静かな中を進む。
街は暑さも騒々しさも夏のままだが、涼しい森ではこの静けさの中に、秋をはっきりと感じる。
ポイントで落ち合った友人もその思いは同じらしく、この静けさの事を口にする。
先に一仕事をした彼の成果を見て、私はどうしようかと思案するものの、体があまり動かない。
そこで、ブラブラとあちこちを見て回る。これはこれで楽しいものだ。一帯は近年になく
広く掘られているものの、初期の人たちのスタイルとは全く違っているようだ。
堀跡の周りを眺めて、落ちている石を見たり拾ったりして、晶癖をチェックする。
午前中はほぼ何もしないうちにお腹が空いたので、弁当を食べる事にする。
彼は昼食時間を設けないことを知っているから、特に声を掛ける事はしない。
森の雰囲気に似て、静かな時間が流れる。
食べ終わってしばらくすると、なんだか掘りたい気持ちに変わる。
当たりを付ける為に掘った場所で、すぐにちょっとした群晶が出たので、ここをやってみる事にする。
割に大きめの石がコンスタントに出て悪くないが、照りは弱そうで拭っても泥が落ちない。
しばらくすると、朝の所から場所替えをした彼から声が掛かる。ガマが開いたという。
行ってみるとその形はすでにないものの、7センチ程度の石が数本並んでいる。
そこでの掘り始めに彼が口にした見立て通りで、さすがだなと思う。ただ、見ていても次が続かない。
再び持ち場に帰ってやるが、そのうちに疲れが出てくると共に、あろうことか飲み水がもう少ない。
そこで、もう少し頑張ると言う友人と別れて、一人で下山する事にする。
来る途中にあったタマゴダケが、朝は一本だったのに、帰りは2本になっている。
車の脇でのんびりとお茶を飲んでいると、彼も下山してくる。
互いのお土産を直接に交換出来て良かった。持っていた焼きそばの缶詰を半分づつ分けて食べて
夕霧が山肌を登って来てスッと寒くなったタイミングで、本当に別れる。
彼は仮眠を取ってから車を出すだろうから、その頃にはまたすっきりと晴れ上がっているに違いない。
きっと明るい月を眺めながらの高速になるだろう。