時がたつ。だが、現在が過去につながり、未来が現在につづく以上、人の記憶は生かされ、惨禍は惨禍として伝えられ、真実はどこまでも守りつづけられねばならない。わけても、若いあなたには、あなたの先輩が何をしたか、どんなことを考えていたか、そして死を前にしてどんなに苦しみ悩んだかを知っておいてもらいたい。
しかも、それを知るということは、ただ過去の事実についての知識としてではなくて、あなたと同じように若かった先輩が血を流し、肉をそがれて体験したことを、あなた自身の体験として身につけていただくということである。この『きけ わだつみのこえ』は、先輩たちの悲痛な声を伝えて、あなたにいまなお生々しい体験を教えてくれるであろう。
一九五九年十月
(「はしがき」より抜粋 )