白い 白い 雪。
積もり積もっていくその様を。
ただ 見ている。
先の戦で凡そ財と名の付くものは全て無くなった。
絹。刀。釜。人。
手元にあるのは只一つ。
何かしらの思い入れがある訳ではない。
否。
嫌いだ。
四角い。
何処を見ても角がたっている。
こんな物を誰が考え付いたのか。
時が経てば経つほどに茶色くなるという。
これが極まると黒になるらしい。
厭な物だ。
汚い。
元々の色がこうなのだ。
それが余計に汚くなる。
見たくはない。
なのに。
何度捨てようが。
何度売ろうが。
これは必ず戻って来る。
他の物は何一つ戻って来はしないのに。
何故これは戻ってくる?
否。
理由なら私はとうに知っている。
何故ならこれには。
目が
ある
何時でも私を見ている。
何も言わずに。
何もせずに。
そこに息づき。
ただ、私を見ているのだ。
私から見えない場所でも。
それは
私を見ている。
見る為だけに、これは戻ってくる。
そして何時か私が石を並べるのを待っているのだ。
見ていれば何時か私が負けると思っている。
負けるのは。
もう。
嫌だ。
思い出すのも難しい昔。
石を並べた時に。
私は負けた。
黒と白。
城と苦路。
だから私は雪を見る。
ただ、
ただ。
降り積もる雪を見る。
その景色は何処までも白い。
私の前には。
別の。
目がある。
何時しか朽ち果てていくもの。
木と紙と。
たったそれだけで
これは
目
を作っている。
戻ってくるもの。
これも木と墨で。
目
を作っている。
「何だ」
木、はその物の中に。
目
が、あるじゃ、ないか。
此の世で目が無い場所は。
ない。
ならば。
私が
目
になれば良い。
そうすれば。
見る側になれる。
そして私は見ている。
落ちる雪を。
積もる雪を。
茶色の嫌な物を。
多くの
目
を持って。