お調子者の系譜(―― The key of him is C-major.)
※時々出て来る次世代ネタ共通設定
葵 悠一郎 [あおい・ゆういちろう]:長男。理屈屋で頑固。比較的冷静。
葵 叶二郎 [あおい・きょうじろう]:次男。3歳違い。直感が鋭く気分屋。
「きょーこさーん、たっだいま〜! ……っと、」
「…おかえりとーちゃん。ひさしぶり」
「おう、ただいま。なんだよ叶ひとりかー? 悠と今日子さんは?」
「……にーちゃんたち、買い物」
「そっか、ちょーどそんな時間だもんな。……で、お前、留守番?」
「…………」
「ナニ萎れてんだよ。あ、留守番おしつけられてむくれてんだなー?」
「…シーフードヌードル」
「へ?」
「オレのシーフードヌードル…取り上げられた…リニューアル新発売なのに、どーしても今日食いたかったのに、
見つからないうちに食おうと思って、せっかく鞄の奥に隠して持ってきたのに!」
「あー、そかそか。……さすが今日子さん、隠してもすぐバレるか……」
「帰ったらすぐ食おうと思っ て、腹減らして帰ってきたのにぃぃぃぃぃぃ」
「うんうん、泣くな泣くな。お前の気持ちはよっくわかる。それを楽しみに長い帰り道も頑張って来られるんだよなっ」
「夕飯前なのに駄目よこんなの、ってソッコー取り上げられて、全っ然オレの言い分聞いてくんねーし……!」
「んー、まあソレはそー言われるだろーけどな」
「だって、夕飯のあとに食っても旨くねーじゃん! めっちゃ腹減ってるときだから旨いのに!」
「なんという正論。お前正しい」
「だろ? 絶対そーだろ?」
「夕飯前なのに、って理由じゃ納得いかねぇよなー。カップ麺喰って、夕飯もちゃんと喰って、で別にいいじゃんか」
「だよなだよな! とーちゃんもそー思うよな!」
「おうよ、俺はお前に味方すんぞ! ……なんかこんな話してたら喰いたくなってきたなーカップ麺」
「腹減ったー!」
「ちっと待ってろ、今日子さんが取り上げたもん隠すってぇと大体……(がさごそ)あれ、こっちか?……(ごそがそ)お、そーだそーだ、あった! よっ、と。ホレ」
「おお! とーちゃんスゲェ!」
「手間賃として半分よこせ」
「半分もかよ! 一口でいーだろ?」
「やだね、俺だって腹減ってるもん」
「オレが買ったのに……」
「俺が見つけてやんなきゃ喰えなかったクセにー」
「オトナげねぇな!」
「大人の知恵と言え」
「ちぇー、しょーがねーな……。きっちり半分だぞ、それ以上はダメだからなっ」
「へーいへいっと。ま、そうと決まればさっさとお湯入れてくれ」
「えーと、熱湯3分……と 」
「こういうときの3分って長ぇんだよなー! さっさと喰おうぜ、今日子さんに見付かっちまうと厄介……だ……」
「ん? どーしたとーちゃん?」
「……楽しそうねぇ、加賀くん」
「げ! かーちゃん!」
「健全な食生活を身につけさせたいっていう人の苦労を、そうやってあっさり無駄にするのねえ。たいした父親ね」
「……今日子さん、声は抑えていらっしゃいますが、怒りのオーラがだだ漏れでございますよー……」
「あら、気のせいじゃなくて? 別にいいのよ、貴方がそういうつもりなら。私は私でやるだけですもの」
「……と、とーちゃん、オレ、なんだか怖いです!」
「俺も怖いです……!」
「ね、いいわよねー悠、今日の夕飯は、特製チーズハンバーグに、ポテトサラダと新玉葱のスープですもんねー」
「うん」
「え、マジで? やった、今日子さんのハンバーグ久しぶり!」
「あら、加賀くんたちの夕飯はカップ麺でしょ? ハンバーグは私と悠の分だけよ」
「「…え?」」
「母さん、おれ、叶の分のハンバーグもらっていい?」
「もちろんいいわよ食べちゃいなさい☆ あ、じゃあ私、加賀くんの分のビール飲んじゃおーっと」
「っておい、ちょっと! ひっさびさに一緒の夕飯だってのにそりゃねーだろ今日子さん!」
「あら、私は別に構わないわよ。貴方たちふたりで勝手にやったら?」
「んな……こら、叶、お前からもちょっと何とか言え!」
「…………」
「ナニ黙ってんだよ、」
「……とーちゃん、コレ、」
「へ?」
「やっぱり、半分じゃなくて全部やるよ☆」
「え? おい、叶……」
「かーちゃんごめんオレが悪かった! 代わりに色々手伝うからさぁ、オレの分のハンバーグもさぁ〜」
「……う、裏切られた……実の息子に……こんなあっさり……!」
「あ、父さんが床に突っ伏してる」
「いいのよ悠ほっときなさい。それにしても見事な手のひらの返しっぷり。やるわね叶」
「……ここで言うのも何だけど、我が弟ながら調子よすぎ」
「ま、父親に似たんじゃない? あ、ねえ加賀くん、このカップ麺伸びちゃうわよー? さっさと食べたら?」
「……うう……ちくしょうあのガキ……今に見てろ……!」
翌日、学校で昼休みを迎えた叶二郎は、確かに入れた筈の弁当がいつの間にかAV(あろうことかVHS)にすり替えられているのに気付いて、ひとり落涙したとかしないとか――。
[2011年6月/for Ms. nori as commemoration of 9000-hits]