手を繋がないで


 並んで歩く。それだけ。
 手も繋がないし、腕も組まない。
 腰に手を回さないし、肩に縋らない。
 ただ同じ速度で、同じ方向へ、一緒に歩くだけ。
 それだけ。

 照れくさいからではない。
 みっともないとも思っていない。
 ただそれが自分たちのスタイルではないだけ。

 走り出したくなった彼がいつでも私を置いて走っていけるように。
 振り返りたくなった私がいつでも彼を放って戻っていけるように。
 そしてまた、何食わぬ顔をして一緒にいられるように。

 私たちは手を繋がない、
 偶然同じ方向に、たまたま同じ速度で、不思議と一緒に歩くだけ。
 それだけ。

 そんなふりをして、
 一分でも一秒でも長く。

 今日もまた、一緒に。

[2010年4月/6月再録]