きらきらとかがやくもの(―― I found him brilliant.)


[calling]

「ハーイ、ジャッキーよー!」
「もしもーし、リサでーす。お兄ちゃん回収完了ー」
「あ、リサちゃん? ご苦労サマ! やーっぱり熱あったー?」
「あったあった。タクシーの中では意地張ってたけど、部屋に入った途端に倒れたよー。解熱剤飲ませて、今やっとうとうとしてる」
「よかったー、告げ口しといて。しっかり寝かせといてやってねー」
「うん、ありがと。グーデリアンさんのおかげ」
「いーのいーの! あ、お礼にデートしてくれるっていうなら、喜んでお付き合いしますケド?」
「こっちからお断りしまーす」
「あらら、ツレナイっ」
「お兄ちゃんにバレたら、また熱出されちゃうもん」
「だよなー」
「それにしても、すごいね、グーデリアンさん」
「え? ナニが?」
「よく気付いたね、お兄ちゃんが具合悪いってこと。リサだってわかんなかったのに」
「そりゃ、わかるよ。ノド痛そーにしてただろ?」
「……してた?」
「してたって。ハイネルがあんなにがぶがぶドリンク飲むの、珍しーもん」
「…あー、そういえば、そうかも」
「アイツさー、表情には出さないように気を付けてるケドさ、意外とあちこちから本音が漏れるだろー? わりかし、わかりやすいヤツなんだって」
「そうかなぁ。お兄ちゃん意地っ張りだから、絶対、そういう弱み見せないように頑張っちゃうのに」
「しょーがないじゃん、頑張ってても、バレてるもんはバレてるんだから!」
「まあね。でもほんと、助かっちゃった。困るよねー、周囲にはリスク管理目標管理ってうるさいクセに、自分は体調ひとつ管理できないんだから」
「テキビシイね……さすが、あのハイネルの妹……」
「それでも、こーやって心配してくれる人が近くにいるんだから、幸せ者だと思うな。ありがとう、グーデリアンさん」
「いーってコトよー。それに、」
「ん? それに?」
「なんだかんだで、愛されてるからなぁ、ハイネルは。別にオレがお節介焼かなくったって、誰かしら助けてくれるとは思うんだけどさ」
「……そうかなぁ?」
「愛されてるって。少なくともうちの人間で、ハイネルのことキライなヤツなんて、……あー、ニガテなヤツはいるにしても、キライってヤツはまずいないんじゃないの?  一途で情熱的な、白皙の美人監督だもん、そりゃー愛されもするってもんでしょーよ」
「美人って……お兄ちゃん聞いたら怒るよー?」
「うん、まあ、怒るだろうけど。でもオレもさ、すごいヤツだと思ってるよ、アイツは」
「すごいって?」
「ブレないっていうかさ。まーっすぐで、混じり気がなくて、……すごくキレイで、キラキラしてて、なんてゆーか、ほれぼれするじゃない?」
「……そうかなー」
「そーだよ。その分、見てるこっちは、不安になったりもするケドね」
「不安?」
「日本刀って、あるだろ」
「ニホントウ? 細くて長い、日本の剣のこと?」
「そう。あれ、特別な製法で作るんだってな。オレには、詳しいことは分かんないけど」
「うん」
「それで、なんつーかな、オレ、その『特別な製法』って、きっと刃の純度をどんどんどんどん高くしていく方法なんだろうなぁって思ってたんだ。 でもハイネル、少し違うっつって笑った。純度が高い方が硬くて曲がりにくいいい鋼なのは本当だけど、 純度が高くなりすぎると、すぐ折れる刃になっちゃうんだって。 よく斬れてしかも折れにくい、強い鋼にするためには、ほんの少しの、ちょうどいいだけの不純物が必要なんだってさ」
「ああ……そういうよね。聞いたことある」
「……それってさ、アイツのことだなーと思って。純度が高すぎて、よく斬れるけどすぐ折れそう、っていうの。 つっぱりすぎてるカンジっていうかさー。ああいうキレイなもの、見てるのはオレ、好きだけど、でも時々、心配だよ」
「……そっか、なるほど。そうかもね。――でも、」
「ん?」
「同じようなこと、お兄ちゃんもよく言ってると思うけどなぁ」
「……へ? オナジヨウナコトって?」
「あいつの頭の中は一体どうなっているんだ、『それ以外』が入り込む余地はないのか、って」
「……どーいう意味?」
「んー、よくグチるのはねー、『嬉しいとか悔しいとか、ひとつの感情しか抱えておけないのかアイツは』、 『もっと速くもっと先にという以外に、上手い立ち回りというものを考える頭はないのか』、 『次から次へと女を口説きながら、そのひとりひとりには真剣そのものだというのが迷惑なんだ』……」
「……相変わらずエンリョのない物言いネ……」
「まあねー。でも、たぶん、褒めてるんだよ?」
「ほめてはないでショ」
「うーん、お兄ちゃんとしては褒めてるつもりはまったくないんだろうけど、実際にはそうも受け取れちゃうんだよね、っていうか。 羨んでるというより、憧れてるみたいだなって、リサなんか思っちゃうもんね」
「……ちょっと、プラスに捉えスギじゃない?」
「率直な感想を述べてるだけだよー?」
「ホントにィ?」
「ほんとに。ほら、お兄ちゃんて、何やらせても優秀ではあるんだけどさ、悪い言い方すれば、器用貧乏?っていうのかな、そういうところがあるじゃない」
「…うん」
「自分でもそれ分かってるから、あちこち無理していっぱいいっぱいになっちゃったり、意地ばっか張って身動き取れなくなっちゃったり、ずーっとそういう風だったからね。 グーデリアンさんの気負わないところっていうか、余計なこと考えてがんじがらめになっちゃったりしないところ、 お兄ちゃんにとってはちょっと眩しかったり、するんじゃないかなぁ」
「……そっか」
「ま、お兄ちゃんぜーったいそんなこと認めやしないだろうから、リサがなに言っても憶測なんだけど」
「だよねェ」
「それでも、グーデリアンさんがうちのドライバーやっててくれて、よかったなーってリサは思ってるよ。 今日のことも、ちゃんとお礼はするよ? 何がいーい? あ、デート以外で!」
「えー、デート以外でェ?」
「お兄ちゃんに叱られるのやだもん」
「そりゃ、オレだってハイネルに叱られるのはヤだけどさ……うーん、じゃあ、リサちゃんオススメのお店でディナーおごってもらう、とか?」
「あっ、いいねーディナー! じゃあ、お兄ちゃんに言っとくね☆」
「え、ハイネルとなの!? リサちゃんじゃなくて!?」
「だからー、デートはお断りしますってば」
「ヤダヤダ、ぜーったいカロリーがどうのマナーがどうのって口うるさく言われるもん、ハイネルとディナーなんて無理ムリむり!」
「そっかなー。……じゃあ、リサも含めて三人で!」
「……お目付け役つきデートってコトね?」
「リサがお目付け役で、グーデリアンさんとお兄ちゃんがデートを……」
「ちょ、やめてよリサちゃん! 想像したくないヨそんなの!」
「だーいじょーぶだよ、お兄ちゃん、なんだかんだ言ってもグーデリアンさんのこと大好きだもん。ね?」
「いや、ね?って言われても」
「ま、なんにしてもだよ、早く元気になってもらわなくちゃね」
「……そーね」
「明日は休ませてもらうけど、明後日は出られると思うよ。っていうか、行くって言って聞かないと思うから、どうにかして明日中に治させるねー」
「おー、大変だろうけどヨロシクー」
「ありがとうね、グーデリアンさん。じゃ、……っと、」
「ん?」
「お兄ちゃんに伝言ある?」
「えー? 伝言?」
「愛の言葉かなんか」
「なんでヨ……んー、そしたら、『一日しか待たねーぞ!』って言っといてくれる?」
「あはは、それはお兄ちゃん、喜ぶよ」
「ソイツは何より! リサちゃんも、うつされないよーにして、ガンバッテねー」
「はいはーい。じゃ、おやすみなさーい」
「オヤスミー」

[Hung up]

[2011年12月]