邂逅
偶然すれ違っただけのその人が振り返って笑った。
不意に口づけるみたいに素早く、鮮やかな瞳が閃く。
(ひさしぶり)
(あいたかった)
(げんきでね)
(あんたもね)
聞いたことも無い声が頭の奥で舞い上がり、僕は人混みの中に立ち尽くした。
(あいたかった)。
感情の破裂。
気付いたら僕は泣いていた。
夏の初めの、雨の日だった。
◆
(生まれかわりって、信じる?)
そう言って笑ってみせたのは誰だったろう。
ずっと前から、そう、それこそ何百年も前から、こんな思いを知っていた。
愛しくて、でも、恋ではない。
だから、あんな約束を、した。
(生まれ変わったら、また 会おうね)
(恋人になるとか、そんなんじゃなくて さ)
(どこかで 偶然 擦れ違うの)
(そしたら 笑って 手を振ろう)
(ね?)
兄弟? それとも、親友だろうか。
かつての恋人同士? どちらかの、片想いだっただろうか。
決して重ならない。けれど誰より近い。
僕たちは、すれ違う。
何度でも、巡り逢う。
一瞬だけ交わった視線に、ありったけの想いを込めて。
「あなたがしあわせでいてくれますように」
「アナタがシアワセでいてくれますヨウニ」
「貴方が 幸せで いて くれますように」
…………
◆
何百年も後、次の体で出逢う時には、僕の方から笑いかけよう。
見上げた雲間に、青空が覗いた。
[09年7月]