お暑いのがお好き
「……全っ然理解できないんで、もーいっかいちゃんと分かるよーに説明してもらっていーですか今日子サン?」
「あらこんなことがまだ理解できないの? 耳が悪いの頭が悪いのそれとも性根がねじくれてるの?」
「聴力もIQも正常ですぅー。心根は湧き水のよーに清らかですぅー」
「どの口が言うの」
「説明どこ行ったんだよ」
「これ以上言うことなんてないわよ。前年比2割減の節電目標、オーバーしたらペナルティ、アオイとしてはそれは避けたい、それだけ」
「どっか他で削ってくれよ真夏の真っ昼間に冷房無しとか殺す気か?」
「私に言われてもどうにもならないのよちゃんと水分とって乗り切ってねみんな、っていうか、私がもうダメそう」
「女王様が真っ先に白旗揚げてどーすんだよ、」
「喋んないで頭ぐらぐらするから」
「お互いさまだろちくしょーあっちぃ……」
「暑いわよね……」
「……ちっと離れてみたらどーよ今日子サン」
「貴方がそうしてみたらどうなの加賀くん」
「いやいやいや俺なんかが女王様を差し置いてなんて、ねぇ」
「遠慮しないでどいていいのよ」
「しますって、今日子サンこそ動いていいんだぜ?」
「貴方が動きなさいよ」
「やですー。今日子さんがどけばいいと思いますー」
「どいてよ」
「ヤダってば」
「暑いでしょ」
「あちぃよ」
「じゃあどけばいいじゃない」
「ヤダってんだろ」
「なんでよ」
「ここがいちばん風が通るってアンタも当然知ってんだろ、」
「当たり前でしょ」
「だからどかねーよ?」
「あーもう、暑苦しい……」
「お互いさまだっつってんだろ」
「うう、融けそう……」
「あっちぃ……」
――そうして結局会議の間中ずーっとお隣同士でぴっとり貼り付いてた二人のおかげで、ただでさえ暑い会議室はますます暑苦しく、
当日の議題そっちのけで「あの人たち距離感おかしい」がその日のアオイネットワーク内ホットワードになったそうです。
……アオイもたいへんですね。
[2013年7月]