うそつきハニー
僕の恋人は、ウソツキです。
「なによ! ハヤトなんて、だーいっきらいっ!」
「もう知らない!」
こんなことを言うときはいっつも、もっと構ってほしいってことなんです。
昔むかーし、僕がまだまだ子どもだった頃にはね、そりゃあビックリして、おろおろして、すぐに謝りに行ってたもんですけど。
でも今ではまあ、そういう態度も可愛いなって、思うから。
だからこうしてちょっと離れて、くすくす笑ってみてるんです。
大丈夫、心配いりませんよ。
彼女が可愛いウソツキだって、僕にはちゃんと分かってますから。
◆
おれの恋人は、嘘つきだ。
「だいじょうぶだって、こんっくらいのこと」
「えー? ヨユーだよ、すぐ終わる! 大人しく待ってろっつってんの!」
こんなことを言うときはいつも、本当は忙しかったり痛かったり辛かったりしている筈で。
昔むかし、おれがまだまだ未熟者だった頃にはそりゃ、何にも気付かないで、本人がいいならいいかなんて思って、軽く受け流しちゃったことなんかもあるんだけど。
でも今ではさ、おれには何が出来るかなって、考えられるから。
だからこうしてちょっと離れて、なんかあったら駆けつけられるようにはしてるんだ。
大丈夫、なにも心配いらない。
彼女が凛々しい嘘つきだって、おれはしっかり承知してるから。
◆
俺の恋人は、嘘吐きだ。
「平気よ。私は気にしてないから」
「貴方がそんな顔する必要、ないわ」
こんなコトを言うときはいーっつも、それなりに落ち込んでるってコトで。
昔むかし、俺がまだまだ距離置いて接してた頃にはまあ、うんざりしながら仕方なく慰めてやるってのが最終的な行先だった気もするけど。
でも今ではほら、意地っ張りの加減もお互い、わかってきてるから。
だからこうしてちょっと離れて、女王陛下のお許しを待ってる。
大丈夫、心配するこた何もない。
彼女が優しい嘘吐きだって、俺にはとっくに解ってるから。
◆
オレの恋人は、うそつきだ。
「怒ってなんかいませんわ」
「やだ、なんて顔してるの、修さん?」
こんなことを言うときはいつも、表面上の意味とは全く逆のことを考えているらしく。
昔むかし、オレがまだまだ油断し切っていた頃にはだ、ああそうかならばよかった、とか、間抜け極まりない安心の仕方をしていたこともあるにはあるんだが。
でも今ではまあ、オレも少しは学んで、反省したりもしているから。
だからこうしてちょっと離れて、大人しく項垂れてみせている。
大丈夫、心配いらないはずだ。
彼女が賢いうそつきだって、オレには心底わかってるから。
[2013年4月]