ヤキモチ焼きも好きのうち


 信用されているとも言えるし、全く信用されていないとも言える。
 打ち上げにも出ずに繁華街へ逃げ出して、おバカでカワイイ子と一晩おんなじ部屋で過ごした。
 ……それがどーした。
 と、開き直れるのは男の側で、女の方は気付かぬふりをするか、目くじら立てて怒るか、よよと泣き崩れるか、そーゆーもんだろう。いや、そーゆーもんであってほしい。
「……せめてその頭、隠して行きなさい」
 朝帰りのモーターホーム、溜め息混じりの命令口調で彼女が言う。
「ったって、」
「疚しいことするときくらいは、目立つって悪癖を封印するべきじゃないの?」
 反論する前に返される。子ども扱いされているようで、ちょっとばかり不快になる。
「……別にやましかねーだろ」
「まだ公式戦当日のうちに、街いちばんの風俗街でフォーカスされるのが疚しくない?」
 そりゃ、そーなんだけど。いーじゃん、されなかったし。
「気を付けなさいと言ってるのよ。いいこと? あなたの実力は当然のこととして、あなたの振舞い、イメージ、すべてに対して支払っている契約金なんですからね」
 口に出さなかった反論をさらりと掬い上げて切り返す。
 あー、さすがだ。さすがだよ女王さま、ビジネスに関してはやっぱ、あんた一流だ。
 でもさぁ。……なんか他に、思うことねーのかよ。
 このお叱りは部下の軽率な振舞いに対してのもの。それは当然だし、分かる。
 でもさぁ。……もーちょっと踏み込んでくれても。
 上司としての立場以外に、もうちょっと。
「……妬いてくれても、いーんじゃねーの」
「?」
 聞こえないように言ったので、当然、彼女は不思議そうな顔をした。性別の違いが恨めしいと思いながら、彼は大きな溜め息で返した。


[09年7月]