真珠
なんていうか
それは、
まるで張り詰めた糸にぴりりと歯を立てるような行為。
首飾りは真珠だった。
優美な白を一粒一粒繋いで留めた美しい曲線。
爪を砥ぐように牙を剥くように尖らせた想いで襲ったら、
張り詰めた糸が、切れた。
感心するくらい彼女に相応しい、薔薇色の絹のドレスだった。
月影色の真珠が深いその赤によく映えた。
連れ出すというよりひっさらうようにして倒れ込む真っ白な麻の上、
連なった真珠は無残に千切れて、散った。
――彼女を縛る首輪のようだと思ったのだ。
引きちぎってさえしまえば自由になると思ったのだ。
身動きさえ取れなくなった現状から抜け出せるかもしれない、
だなんて
思ったのだ。
なんていうか
それは、
まるで張り詰めた糸にぴりりと歯を立てるような行為。
睨みつけていた彼女の眼差しが歪んだ。
唇を噛んで、かぶりを振った。
その度に飛び散る優美な白。
月影色の、真珠。
張り詰めた糸がぷつりと切れた。
繋ぎとめてなんておけない、飛び散る、解ける、散らばっていく、その色。
密やかに光を抱く白濁、
――誰かが下腹に溜め込んでいたような、その白。
絡めとって丸く、抱き込んで艶やかに、育て上げられた生々しい白濁。
(誰の?)
尖らせた想いがそう言わせる。
絡め取ったその白濁は、
(誰、の?)
張り詰めた糸が、ぷつりと切れた。
睨みつけていた瞳が歪む、潤む、解ける、転がっていく、涙。
ほろほろと光を弾く銀色、
――切れた糸から散らばってくみたいな、その色。
なんていうか
それは、
まるで張り詰めた糸にぴりりと歯を立てるような行為。
紡ぎ上げてきた繋がりが、
細く眩しいその線が、
ぴりりと
千切れて途切れてそうして消えた、
消えた。
[2012年9月]