だからそれが二番目。


「……二番目に大切なものはなんですか?」
と、きりんが言った。僕は爪切りをしているところだった。
「それ、何? 心理テスト?」
「煽り文句。映画の」
 振り向くと、きりんは新聞を指差していた。
 新聞より、絆創膏の貼られた指先に目が行く。昨日、うっかり包丁で切った傷だ。まったく、きりんはいつまで経っても不器用が治らない。
「二番目なら、愛、かな」
 僕は答えて、きりんの方に寄った。人差し指を伸ばしたままの左手をとり、指先の絆創膏を剥がす。やっぱり、膿みかけてる。
「二番目なの? それ」
「こら。めんどくさいとか言って消毒しないから、こんなことになるんだぞ」
「愛って、普通いちばん大切なものだと思うんだけどな」
「オキシドール、取って」
 聞いてないふりをしていたきりんは、うわ、と顔をしかめた。しみるからイヤなのだろう。まるで小学生だ。
 きりんが取ってくれないので、僕は自分で棚から瓶を取り出した。
「あたしなら、やっぱり愛はいちばんなんだけどな」
 しつこい。
 僕はティッシュにオキシドールをぶっかけた。つん、と微かな匂い。
「そんなこと言ってたら、きりんと一緒にいられないよ」
 傷口を拭くと、泡がじゅわりと弾けた。きりんが、痛いっ、と声を出さずに喚く。
「しみるなぁ……。
……なんで?」
「我慢しなさい。
……きりんは変な奴だから」
 きりんの茶色い目が、ちょっと大きくなる。
「あたし、変かな?」
「変だよ。すごいのっぽだしがりがりのくせに信じらんないほど食うしさ、そのわりには料理キライだし。短気なのにとろいし鈍いし、スタイルいいのに胸はないしさ」
「……そこまで言うかなー」
「そういう女に、愛を感じる男は少ないだろ。僕もちょっとしか感じない」
「じゃ、」
 きりんが、じいっと僕を見た。
「なんであたしと結婚したの?」
「きりんのことが好きだから」
「好きなの?」
「好きだよ」
「愛してる?」
「ちょっとだけね」
 きりんは黙り込んだ。暫くして、分かった、というように深く頷く。
「……そっか。二番目」
「うん。二番目」
 僕はきりんの頭に手を置いた。
 僕の不滅の一番目は、上目づかいに僕を睨んで、
「子供扱いしないでよ」
と、言った。

[09年7月]