Once, twice, three times
……まあどんなコトだったって初めての感慨って奴は付きもんですよ。
ええ、はっきりとは覚えてないけどアレはたぶん夏も終わりかけの頃で、
まだまだ薄着の無防備な後ろ姿が極悪だと思いながら呑んでた日でしたよ。
んもう、べろんべろんで。ええそうです、べろべろどころじゃなくてべろんべろんで。
なんかもうそのまま家まで送り返したら「ウチの子じゃありません」って付箋貼られて返却されるんじゃないかってぇような。まあそんな感じで。
仕方ないんでうちまで連れて帰ったんですよ。あ、うちって俺のうちですよ俺の。
幸いなことにずいぶんな薄着だったんで、脱がしてやるっていう役得――もとい面倒もなくそのまんまベッドに転がしておいたんですが。
明け方前に一度用を足しに起きたみたいでしたよ。正気じゃなかったですけど。いや、ありゃ酔ってたっていうより寝ぼけてたっつーか。
若干低血圧なのは知ってたんで、まあ別にそれには感慨もありませんでしたけど。
けど、日が昇って目が覚めてからのリアクションったらなかったですね。
ずいぶんぼーっとした目で天井見てんなぁって思ったら、イキナリがばって。がばっ。漫画かよ、ってくらいの擬音付きで。
手なんかわなわな震えちゃって、あのタダでさえでかい目がもう見事なくらい真ん丸で、
「か、かかかかかかっ加賀くんっ!?」なーんつっちゃって。
おう、おはよーさん、っつったらまた唐突に何か気になっちゃったらしくてものすごい勢いで下向いてまして。
ええ、見てるワケですよ自分の体を。いやいやちゃんと服着てるっつーの。
ツッコむ前に、さすが、見事な感性で感じ取って下さいまして、「き、着てるからって安心出来るって訳じゃないでしょ!?」なんつって、
「何もしてないでしょうね!」って。イキナリ疑う方向からですよ。失敬な。
……正直、何されてたって文句言えないと思います。だってエロいもん。存在自体が。
あんなカラダであんな服着てあんな態度で酔い潰れられた日にゃ、並大抵の理性じゃぶっ飛びます。
飛ばさなかった俺エライ。寧ろ褒めてほしいくらい。って言う前にもうあのひと、言った側から反省して後悔して真っ赤になってまして、
ああもう堪んないですよホント。てかあの瞬間がいちばん理性吹っ飛びそーだった、うっわやっべあぶねー。
「ご、ごめんなさいね」なんつって俯くってーと、耳までぽうっと赤くなった横顔がもう、大変な愛らしさで。
そのくせ着ているものは昨夜のままの超絶に極悪な薄いワンピースだし、寝乱れて胸元だとか太腿だとかその辺りが、もう。
んもうもうもうっ、って地団駄踏みたいくらい。そこを絶妙に両手で押さえてちょっぴりおろおろしながら上目遣いで睨んで、
「あ、あんまり見ないでちょうだい」なーんて言うんだからホント極悪。鬼。悪魔。正直速攻で押し倒したかったです。
平静を装い切った俺エライ。自分で自分に感動。
ま、そんないきさつを経て、一緒に朝飯なんか食べちゃって、それはそれでちょっとばかりきゅんとしちゃいましたね俺は。ええ。
そんな初めての感慨。
2回目は確か9月も後半の、そうそう、あのひとのお誕生日がもうすぐですよって時期で。
さすがに初めてのときほど慌てちゃいなかったけど、やっぱり耳まで真っ赤になるのがほんと堪んなかったですね、はい。
「ごめんなさい、私ったら、また……」なんつって言葉が途切れるのがいいんですよ。普段そんなコトぜってーねぇから。
毛布引っ張り上げて乱れちゃった胸元隠して、ちょっと俯いてしゅんとしてるトコなんて、もう。
あれです、「正直、おにーさんもう辛抱堪らんっ!」ってカンジです。わかるでしょ、ね。堪らんです。
それでも耐えちゃう俺エライ。なんかもー涙出ますわ。
このときはお詫びだっつって朝飯の用意をぜんぶやってくれて、ご飯なんかもよそってくれちゃって、
あーもう、なんですかこの甘酸っぱさは。夜とは違う意味で辛抱堪らんですよ。ええ、そんな2回目のオハナシ。
3回目は割と近くて10月の頭、でしたかね。そのあと、シリーズ終わってからの個人的打ち上げで潰れてもう1回。
で、クリスマスんときも俺がうちまで運んでったし、そのあとのプライベート忘年会でも連れて帰ったのは俺。
だんだん着てるもんが厚く重くなるんで、暖房の効いた部屋で寝かせるときにはちょっと、大変でしてね、ええ。
いや役得ですけど。ああ認めますよ役得ですよ。まあコートとかジャケット程度なら別にどーってことないんですけどね。
それこそ堪んないですよ、あのふわふわしたセーターを脱がせるのとか――
両手あげさせてこーやって脱がせるでしょ、こーやって、えいやっ、て。
そーすると、目の前で胸がぷるんって揺れるワケですよ。目の前ですよ、それこそ至近距離ですよ。極悪でしょ。ホント鬼です。
そりゃ吸い付きたくもなりますよ。まだブラしてるけど。いやそんなん関係なく抑えましたけど理性で! 俺エライよマジで!
もう5回6回となるとだいぶ向こうも状況呑み込んでるカンジで、朝起きても、「かっ加賀くん!?」なんて素っ頓狂な声出したりしないですよ。
「おはよう、加賀くん。ごめんなさい、また運んでもらったのね」なんつって。にっこりしたりしちゃったりして。
ああ、夜のぷるんっとはまた別方向でコレも極悪。朝からそんな顔。そんな顔!
っとに自覚ナシでそーいうことするからタチが悪いってんでして。もう、なんつーか胸がですね、きゅーんと。
きゅうううううぅぅんと、なるワケですよ。ねえ。そんな感じで回数ばっかり増えていって。
で、今朝、言われましたよとうとう。「ねぇ加賀くん、今度からここに、パジャマと洗面用具を置かせてもらってもいい?」って。
……極悪ですよ。鬼です。いや悪魔、それか魔女です。最悪です。
ねえ女王陛下、そーいうのは同棲ってんですよ。
同棲ってのはホラ、一種の巣作りなんで、やっぱ繁殖行動が伴わないとしっくりこないわけですよ。
そう、繁殖行動。若い男女が二人きりで、毎晩励むべきコトっつったらソレでしょう。呑み比べじゃなくて。
と、そろそろ俺は言いたいんですけど、もしきょとーんとした顔されたらどうしようと思うと、ちーっとばかり怖くてですね。
……なんかいい案、ありませんかね。
きょーこさんに嫌われず怒られず、警戒させず緊張させすぎずに、俺をオトコとして意識してもらえる、いい案。
ご提案、お待ちしてますんで。ええ、正座して待ってますんで。本気で。
なにぶんヨロシク、お願いします。平伏。
[09年10月]