大蟹の伝説


何百年か昔、甲斐東部の万力村にある長源寺では妖怪が出没し、住職が誰も居着かなくなった
ある時、諸国を巡っていた法印がこの地に足を留め、異様な妖気を感じた彼は寺に乗り込み夜を待った。やがて闇が辺りを包み、不気味な声が響き渡ると、一面に立ちこめた妖気の中に、身の丈3メートルもある妖僧が現れ、法印に問答を仕掛けた
「両足八足、横行自在にして眼、天を差す時如何」
法印これを聞くや目玉を剥いてにらみ「汝は蟹なり」と大喝一声。虚を突かれた怪僧は、四畳敷きもある甲羅の化け蟹となり寺の西の沢に逃げ出したが法印は手にもった独鈷を投げつけ、化け蟹の分厚い背中に突き刺した。化け蟹は最後の力を振り絞り反撃を試みるが、ついに法力に破れ、沢の上流まで坂をのぼり力尽きた(この坂には今も「蟹追い坂」という地名が残る)
そしてこの甲羅の割れ目から五彩の雲が立ち昇り、千手観音がお姿を現した。法印はいたく感得してこの寺の本尊に千手観音をお祀りした。伝統の沢は蟹沢と呼ばれ、今もきれいな沢水が静かに流れている。因みにこの寺の山号は蟹沢山(かいたくざん)という