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    乙女高原ファンクラブ 公認
 乙女高原メールマガジン 第263号 2012.1.22.
  発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町在住)
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  ▲▼ も く じ ▼▲
NEW! 0.【ニュースニュース】
NEW! 1.【書籍紹介】「世界遺産をシカが喰う」ほか
     2.【活動案内】第11回乙女高原フォーラム 1月29日(日)
NEW! 3.【活動案内】総会と座談会 3月11日(日)
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0.【ニュースニュース】
●1.いよいよ乙女高原フォーラムまであと1週間となりました。毎年,ゲストのお話やプログラムにわくわくしていますが,今回も今からとても楽しみです。特に第1部(1時間目)は子ども向けのプログラム。インフルエンザの流行がちょっと心配ですが,マスクをしてぜひお集まりください。楽しいですよ,虫のワークショップ。虫のクラフト作りもあります。
今回はおみやげも楽しみです。杉田さん特製の「昆虫パズル」。ぼくの家ではお正月に家族に試してもらいましたが,大好評。家族でみかん食べながらこたつで黙々と「平面ルービックキューブ」に挑戦しました。スミレのフィールドガイドもフォーラムにぎりぎり間に合いそうです。こちらもお楽しみに。

●2.毎年,乙女高原フォーラム開催に合わせて山梨市民会館ロビーで行っている「ようこそ乙女高原へ」展は好評開催中です。山梨日々新聞でも取り上げていただきました(1月13日)。お近くにお出かけの際はぜひお寄りください。山梨市の万力公園北です。

●3.第11回乙女高原フォーラムは1月29日。開催時間は午後1時から3時半ですが,スタッフとして参加するは午前11時に3階「ちどりの間」に集合です。スタッフにはファンクラブでお弁当を用意します。弁当注文の都合がありますので, スタッフとして参加希望の方は1月25日までに事務局までお知らせください。

●4.旧ホームページを引き継いで丸5年がたちました。2008年4月からは,「ぼくが乙女高原を訪ねた時に撮った写真の中から毎回3枚を選んでアップする」という「自分ルール」のもと「乙女高原フィールドノート」というブログを始めました。
    http://blog.goo.ne.jp/otomefc
 そして,去年の草刈りからですが,乙女高原ファンクラブの活動の様子を紹介する「乙女高原ファンクラブ活動ブログ」を新たに始めました。よろしければ,合わせてご覧ください。
    http://blog.goo.ne.jp/otomefcact

●5.乙女高原ファンクラブの来年度(4月〜3月)の活動計画を立てる時期になりました。ファンクラブには,乙女高原でやりたいことのある人がやりたいことを提案できる制度を持っています。これを活用して,ぜひ活動を提案してください。また,「こんなことをやったら?」といったアイデアもお気軽にお寄せください。いろいろな活動が展開できるといいなと思います。

●6.次回の乙女高原ファンクラブ世話人会は2月29日(水)午後7時半から9時まで牧丘総合会館で行います。ファンクラブ会員であれば世話人でなくても参加できます。おいでください。
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1.【書籍紹介】

 このメールマガジンで本の紹介なんて珍しいのですが・・・。乙女で進行中のシカ問題にどのような切り口でアプローチしていけばいいのか,そのヒントを得たくて,いろいろな本を読んでいます。その中から3冊を紹介します。

■『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』湯本貴和・松田裕之編,文一総合出版,2006年

2004年,奈良教育大学を会場に,NPO森林再生支援センター主催で行われた「シカと森の『今』をたしかめる」というシンポジウムの内容をまとめた本です。
今,大きな問題となっているシカ問題を,社会情勢を背景とした環境問題として取り上げているのが,この本の一番の注目点です。「シカと森の『今』をたしかめる」ということは,「シカと森と人の『今』をたしかめる」ということでもあるのです。

一方では,シカ問題の深層として日本人の自然とのつきあい方の変化を挙げています。「村落の構造はムラ(村落)を取り巻くノラ(耕地),それをさらに取り巻くヤマ(山林=採取地)の3重円構造で理解できるとしています。このうち,ムラとノラは里であり,ノラとヤマの境界部分とヤマが里山です。・・・これに対して3重円の外側にあるのが・・・モリすなわち奥山になります」という,日本古来の土地利用について述べ,このうち,近代化によって,里山では,これまで資源として使ってきたものを放棄して顧みないというアンダーユースが起こっていて,一方,奥山では,広葉樹の皆伐と針葉樹の植林,あるいは観光による奥山への入り込みの増加とそれに伴う施設整備というオーバーユースが起きている,これがシカ問題の背景に大きくあると解説しています。

 このような「そもそも論」はもちろん重要で,対策も慎重に立てなければならないと思いますが,一方では「自然生態系に関する取り組みの困難さは,完全に学問的見解が固まっていないにもかかわらず,事態はどんどん進行し,手をこまねいているわけにはいかない」ということもあります。それに対して,具体的にどのような対策をとっているかについて,北海道(エゾジカ),大台ヶ原,春日山,屋久島(ヤクシカ)と,たくさんの事例が報告されています。「シカクイズ」なんていうコーナーもあり,楽しみながら読むことができました。
 最後に印象に残った文章を(ちょっと長いですが)引用します。

 森林生態系は単に種々の植物が集まったものではなく,多様な植物と多様な動物が,それぞれ必要な位置を占め,必要なものを得ながら,お互いに相互作用しながら育まれてきた一つの系(システム)です。特定の動植物が突出して生態系のバランスを欠くようであるならば,元通りの,あるいは本来あるべき姿に生態系のバランスを誘導する行動も時に必要となります。生態系そのものが動的に変動している中で,本来あるべき姿を見極めることには困難が伴いますし,また,本来あるべき姿を目標に生態系のバランスを維持すればよいということが確かになっているわけでもありません試行錯誤しながら人と自然の関係を見つめなおすことが続くでしょうが,そのような中で,多くの動植物が作り上げてきた,一つの「系」を,これからもずっと維持していけるように努力し続けることが求められています。


■『捕食者なき世界』ウィリアム・ソウルゼンバーグ著,文藝春秋,2010年

月刊誌『山と渓谷』編集長の神谷さんから「(麻布大学の)高槻先生とおつきあいしていのなら,この本をぜひ読むといいよ」と勧められた本です。高槻先生が解説を書いていらっしゃいます。
 理科の教科書等で「生態系ピラミッド」の図って見たことがありますか? 運動会の組み立て体操でやる「ピラミッド」のようで,一番下が生態系を下支えしている植物たち(生産者),その上に植物を食べる動物たち(一次消費者),その動物を食べる動物たちがその上に(二次消費者),さらにその動物を食べる動物がいて,全体がピラミッドのようになっているというものです。
 一番上に乗っている動物(オオタカやイヌワシといった猛禽が多いです)は下にたくさんの生き物がいて初めて生きていける・・・つまり,「下」が「上」を養っているということを表しています。
 
 ところが,この本の主題は「上」が「下」をコントロールして初めて生態系がうまくまわるという点です。その事例として最初に出てくるのが磯海岸です。生態学者が一方の磯では見つけたヒトデ(その磯でのピラミッドの頂点の生き物=頂点捕食者)を海に投げ捨て,もう一方の磯はそのままにしておき,それぞれの磯がどう変化するかを実験観察します。ヒトデという「悪役」がいなくなったのですから,生態系に平和が訪れたかというと,そんなことはなく,そこの磯はある一つの種に独占されてしまったそうです。ヒトデがいるからこそ,そこの磯には豊かな生態系が保たれていたということです。

 こう書くと,科学読み物のように思われるかもしれませんが,11章あるこの本のうち,シカの事例が出てくる章が3つもあります。アメリカではシカは狩猟対象なので,オオカミは人のライバルです。シカのためにオオカミを絶滅させてしまったら,どんなことが起きたかを「バンビの復讐」という章で報告しています。そして,有名な「シカの食害に悩むアメリカの国立公園に,絶滅したオオカミをカナダから導入した」という事例も紹介しています。オオカミがいないことで安心しきっているシカたちが,オオカミの導入によって行動パターンをかえているという点に注目しています。
 「日本にもオオカミを」という意見を持っている人もいて,シカ問題の特効薬のような気もしますが,国土が狭く,人口が多くなった日本では,オオカミの行動圏と人の行動圏が大きく重なってしまい,予期せぬ影響が出ることが予想され,簡単には導入できないと,ぼくは思っています。

 アメリカ再野生化プロジェクトとして,アメリカで失われてしまった頂点捕食者を再導入しようというプロジェクトが語られます。いい話のように思えますが,中身を聞いてびっくり。ゾウやライオンやチーターをアメリカに放そうというのです。これには世論も黙ってはいません。近くにゾウやライオンがいたら,安心して暮らせません。それはその通りなんですが,そういった人々の心理というのは,「オオカミがいなくなって安心しきってしまった国立公園のシカ」の心理と似ているなあと思ってしまいました。


■『日本のシシ垣』高橋春成編,古今書院,2010年

 「歴史は繰り返される」といいます。今,人々が抱えている社会問題を解決するためのヒントは歴史の中にあるのではないでしょうか。今も昔も人々はよりよい暮らし,よりよい社会を目指して試行錯誤しています。成功事例だけでなく失敗事例もヒントの宝箱だと思うのです。

 日本では古来から,ヤマからやってくる動物たちからノラの農作物を守るためにシシ垣というものが作られてきました。今は,トタンで手作りのものから,業者さんが金網で作った丈夫なもの,電気柵などもありますが,古くは木か土か石か,あるいはこれらの組み合わせで作ってきました。この本によると,「本州の中央高地の長野・山梨・岐阜三県に,シシ垣は多く分布する」のだそうです。宮崎アニメ「もののけ姫」冒頭で出てくる,畑を囲んでいた石垣もシシ垣ではないかと思います。

 イノシシやシカの害から田畑を守るために,人々はどんな基準でシシ垣のルートを決めたのか? どんな工夫をしながらシシ垣をつくったのか,たとえば,シシ垣の高さはどうやって決めたのか,シシ垣のメンテナンスをどのようにしていたのか,本当にシシ垣は食害を防ぐために有効だったのか・・・といったところが,ぼく個人の問題意識です。この本は,ぼくのこんな問題意識に十分答えてくれているとは言えません。でも,反対に新たな視点を与えてくれています。たとえば,シシ垣を「先人が残してくれた地域の文化遺産」として扱い,教育や観光の対象としての可能性を探っている地域があるといった点です。

 さて,この本から少し外れますが,提案です。
 ・山梨でもシカ問題が大きな社会問題,生物多様性の問題になっている。
 ・ヒントは歴史の中にある。
 ・山梨はシシ垣が多く作られてきた地域の一つ
・・・となったら,これはもう山梨県立博物館の企画展示の一つとして取り上げるのにふさわしい内容ではないでしょうか。「山梨の自然と人」が基本テーマである博物館にぴったりの内容だと思います。
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2.【活動案内】
 ●第11回乙女高原フォーラム●

日 時 2012年1月29日(日)午後1時〜3時30分
場 所 山梨市民会館 3階「千鳥の間」
主 催 山梨市,山梨県,乙女高原ファンクラブ
テーマ 希少昆虫の宝庫,,乙女高原は今
定 員 ありません。どなたでも参加できます。事前申込み不要。
参加費 無 料
ゲスト 槐 真史(えんじゅ・まさし)さん(神奈川県厚木市郷土資料館学芸員)

ただの草原と思ったら大間違い。
乙女には,全国的に希少になった「草原」という自然に固有な昆虫が生息するホットスポット。
しかし,コョウモンモドキやアカセセリという蝶に象徴される高原の昆虫たちが,今,絶滅の危機にあるとしたら・・・。あなたはどうしますか?
  ☆
子どもたちも,あつまれ!
フォーラムの前半・1時間目は、乙女高原の虫を楽しみます。
虫のすがたを大きく写して見たり,虫のクイズを考えたり。
ほんものを見ることもできるよ!
後半・2時間目は「乙女高原の昆虫」の話。
たくさんの写真を見せてもらいながら,槐さんのお話を聞きましょう。

 【槐さんのプロフィール】
 神奈川県厚木市郷土資料館学芸員(動植物担当)。湘南工科大学特任講師。専門は博物館学・地域生物学・生物保全学・理科教育。全国的なセミ,チョウ等昆虫の分布調査(たとえば,環境庁(当時)の「身近な生き物調査」,日本自然保護協会の「自然しらべ」など)の部会委員や学術協力員も務める。神奈川県のPTA連合会役員、お子さんが通う学校のPTA会長も歴任

※1月9日から,会館ロビーにて「ようこそ乙女高原へ」展Yを開催しています。
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3.【活動案内】
 ●2011年度総会ならびに座談会●

日 時 2012年3月11日(日)午後2時〜
場 所 山梨市牧丘総合会館 3階 大ホール

出欠ハガキは2月中旬発送予定のニュースレターに同封します。
なお,今回のニュースレターは普通会員にのみ発送します。

※総会終了後,座談会を行います※

座談会の話題提供者 小俣 謙さん
 (山梨県みどり自然課自然保護担当)
テーマ 県の野生動物(シカ)管理の展望
内 容
@山梨県内のシカの現状(生息状況、被害状況、捕獲教等)
A特定鳥獣保護管理計画について(目標、対策等)
Bシカ対策の課題と今後どう進めていくか
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