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    乙女高原ファンクラブ 公認
 乙女高原メールマガジン 第284号 
2013.2.3.
  発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町在住)
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  ▲▼ も く じ ▼▲
NEW! 0.【ニュースニュース】
NEW! 1.【活動報告】2月 2日 第12回乙女高原フォーラム
    2.【活動案内】3月10日 2012年度総会
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0.【ニュースニュース】
●1.の乙女高原フォーラム,楽しく充実したものとなりました。講師の多田さん,高橋さんはじめ,参加された皆さん,スタッフの皆さん,本当にありがとうございました。レポートを書きましたが,長文になってしまいました(→1)。
 地元ケーブルテレビ局がフォーラムの様子を取材してくださり,放映予定は以下の通りです。
  ※山梨CATV デジタル10チャンネル 『ほっと山梨 ワイド版』
   2月8日(金)〜10日(日) 午後9時から

●2.総会は3月10日(日)午後2時から牧丘総合会館にて。今回は世話人改選があります。世話人(運営委員です)になってくださる方を募集しています。乙女高原ファンクラブはボランティア団体です。世話人になるもならないも,ご本人次第。今の世話人の皆さんも全員立候補です。乙女高原を守る活動を続けて行くためには,会員の皆さんのご協力が欠かせません。特に,世話人の皆さんのご協力があってこそです。多くの皆さんの立候補をお願いします。多くの方で分担すれば一人分の仕事が少なくて済みますし,より多くのこと,より大きなことにも取り組めます。

●3.次回の乙女高原ファンクラブ世話人会は2月27日(水)午後7時半から9時まで牧丘総合会館で行います。ファンクラブ会員であれば世話人でなくても参加できます。おいでください。
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1.【活動報告】 ●第12回乙女高原フォーラム● 2月2日

 天気予報は雨でした。ところが,朝から日差しがあり,暑いくらいのいい陽気。草刈りに続いて,またも天気に恵まれました。
 だがしかし,スタッフの中にはご自分が体調を崩されたり,職場の方が体調を崩されたためにシフトが変更になったりして,参加できない方が続出。おまけに,この日は韮崎で『南アルプスフォーラム』,都留で『地域交流研究フォーラム』など類似イベントが目白押し。しかも,同じ市内の根津記念館では豆まきをするというし,同じ会館・階下のホールではパルシステム山梨(生協)主催ののど自慢大会があり,神部冬馬さん(自然派シンガーソングライター,『なごり雪』のイルカさんのご子息といったほうがお分かりになる方が多いかも)のミニコンサートもあるといいます。想像していたより参加者が少なく67人。興味深く楽しいお話が聞けたのに,ちょっと残念でした。

 当日は11時にスタッフ集合。ミーティングの後,係に分かれての準備が始まりました。机といすを並べたり,パソコンとプロジェクターのセッティングをしたり,湯茶の用意をしたり,受付の準備をしたり。交代でお弁当を食べながら,時間までに準備を終わらせました。

 午後1時,市観光課・飯島課長さんの司会で開会です。竹越市長のメッセージを代読していただいた後,プログラムに入りました。まずは『2012年度 乙女高原の活動報告』をファンクラブの三枝さんからしていただきました。映像を交えながら,とてもていねいにお話いただきました。次に『12回のフォーラムの振り返り』。どんなゲストをお招きして,どんなプログラムで行ったかを植原が報告・紹介させていただきました。

 3番目に,麻布大学野生動物学研究室の学生・高橋さんから研究報告がありました。『乙女高原のシカは草原に影響を与えているのか!?』がテーマです。2年間に渡って乙女高原で調査研究なさってきたまとめです。草原と林の中で,巻き尺を使用して,それぞれ2m×5mの枠を設定し(10u),そのなかにシカの糞がいくつあるかを数えて比較するという調査です。それぞれ1箇所だけでなく数箇所設定し,季節を変えて調査しました。その結果,草原でも林でもシカ糞は見つかりましたが,林の方がより多くの糞が見つかりました。シカは草原より林を多く利用しているということです。一方,糞の中身を顕微鏡で調べると,含まれる植物片の組織の様子から,それがササの葉なのか双子葉植物の葉なのかを見分けることができます。それを利用して,糞の組成を調べてみると,冬の間はササを多く食べていることがわかりました。ですが,日光や八ヶ岳のシカが冬の間ほぼ100%ササを食べていることと比べると,その比率は低い(60%程度)です。
 乙女高原できれいなお花を咲かせる双子葉植物の割合を調べてみると,思っていたほど双子葉植物はでて来ないのですが,それでも夏に一番多くなり18%になりました。シカは草原の植物を食べています。
 次にシカ柵の中と外で,代表的な植物の高さを測定し,季節変化を調べました。その中で,ヨモギ,クガイソウ,シシウド,カラマツソウ,イタドリ,タムラソウ,アマドコロ,キンバイソウ,ワレモコウ,ヤマハギ,ツリガネニンジンは,柵内の方が草丈が高くなりました。 高さに違いがなかったのはススキとヨツバヒヨドリでした。特にススキだけは柵の外の方が丈が高くなりました。このことから,多くの大型草本たちはシカの影響を受けていることがわかりました。まとめです。
・乙女高原にシカが進入してきて数年程度と考えられるが,生息密度はすでに高い。
・シカは林をよく利用しているが,草原も利用している。
・冬の間はササが重要なエサ。
・多くの大型草本はシカの影響を受けている。
・乙女高原の今後の保全にシカをどう位置づけるかは難しい問題。モニタリングが必要。
 最後に,高橋さんから感謝の言葉をいただき,思わずほろっときそうになりました。

 そして,いよいよ今日のメインゲストである多田多恵子さんのお話をいただきました。講師紹介を芳賀さんにしていただきました。話の抜粋を載せます(編集したのはウエハラです)

●(多田さんがまず取り出したのはケンポナシ。皆さんに回して,食べてもらいました)日本の木の実の中のヘンテコ・ナンバーワンだと思います。枝の先についている丸いのが実です。クニクニしているのは枝の部分なんですが,ここが食べられます。ちぎって食べるとおいしいんだ。英名はジャパニーズ・レーズン・ツリー。本当にレーズン(干しぶどう)の味です。外側にクニクニしているところがあり,内側に実が来ています。この形にも意味があるんですよね。これらをそのままアングと食べてしまうと,実も食べてもらえます。すると,ウンチの中にたねが出てくるのです。タヌキなんかが食べています。少しずつボタボタ落ちてきて,少しずつ食べられます。

●私たち一人一人に人生があり,物語があるのと同じように,植物にも一つ一つに一つ一つの物語があります。それらの物語が関わり合っているからこそ,いろいろな花があったり,いろいろな動物があったりします。植物や動物の物語にはわからないことがいっぱいありますが,私たちが野外に出かけ,ある時は食べ,匂いをかいでみたりと,いろいろな関わり方をすると,いろいろな物語がわかってくるかもしれません。

●(葉の拡大写真を見せながら)のこぎりの葉が見えますね? これ,ススキの葉っぱです。ススキを触ると,手がスパッと切れてしまうことがありますよね。ススキの葉の縁にはこんなに鋭いガラスの歯が付いているからなんです。ほんとうにガラスなんですよ。ススキって葉っぱがピーンと立っていますよね。ピーンと立っていられるのは葉の縁だけでなく,維管束といって筋の部分にもガラスが含まれているからです。サメの歯のようにも見えますよね。このおかげで,動物から食われないで済むんです。ちなみに,これはガラスなので,燃やしても残ります。たとえば縄文時代の遺跡からススキやイネなどに含まれていたガラスが残っていることがあります。このように,植物か作ったガラスのことをプラント・オパールといいます。

●山で草原になっているところは,ちゃんと理由があります。一つは,窪地になっているところです。窪地には夜の間に冷たい空気がたまりやすいので,木が入りにくく,湿原になりやすいです。もう一つは尾根や山頂です。こういう場所は風が強いので,木が育ちにくく,風衝草原という草原になりやすいです。これらは地形的な要因です。
 もう一つ大きいのが人為的な要因です。日本では茅葺き屋根が多く葺かれていたので,茅葺き用のススキを刈るための茅場がありました。また,里の土手や畦や茶畑は定期的に草が刈られ,里の野原になっていました。ツリガネニンジンは山の花のように思われていますが,じつは里にもあった花なんですよ。ワレモコウやオミナエシ,リンドウも。

●こういう草原は刈ることが大事です。箱根の仙石原なんかはススキの草原として有名ですが,火入れをしています。火入れをすると,熱に弱い草は生えられなくなってしまうので,ススキなどごく限られた草原になってしまいます。
 木を伐らないでいても,草地が維持できなくなってしまいます。もしも,人が手を入れなくなると,草原は林に変わっていきます。

●乙女高原にも植物の移り変わりがあると聞きました。一つはシカの影響が大きいのですが,草原が安定してくると,姿を消してしまうような植物もあります。たとえば,ヤナギランという植物は英語でファイヤー・ウィードといいまして,火事跡植物です。火事が起きると,そこにさーっと増えるんだけれども,ほかのいろいろな草が生えてくると,住みづらくなって姿を消してしまうんですが,その前にたくさんのたねを飛ばして,新しくできた空き地に移り住んでいきます。そんな植物なんです。
 このように,植物の移り変わりには,植物が芽生えることのできる空き地があるかどうか,つまり『攪乱』(火事,崖崩れなど)があるかどうかという要因もあるのです。攪乱があるとヤナギランのような植物は真っ先に生えてきて,素早く成長し,花を咲かせます。でも,攪乱がしばらく起こらなくなると,もっと安定的に育つような植物がたくさん増えてきます。そして,ヤナギランは明け渡してしまいます。「草原を守っていると,減ってくる植物もある」ということです。

●里で草原が維持されているところは今,茅葺き屋根の衰退とともにどんどん減少しています。乙女高原のような野原が守られているというのは,とても貴重なことです。大事にしていってください。
 昔から,にお花がたくさん咲く野原のことを『花野』と呼び,花野に咲く花を『野花』と言ってきました。京都の大原でお花を摘んで,京のまちで花を売る・・・そんな風習があった時代は,京都の郊外に花野が広がり,オミナエシやキキョウ,ワレモコウ,クガイソウ,キスゲの仲間など,草原を好む花がたくさんありました。これらが里の茅場や里の土手などにありました。そういう場所に人手が入らなくなり,荒れ地になったり,花がきれいなために乱獲されてしまったということもあるし,こういうところに一回でもブルドーザーが入って掘り返されてしまうと,外来種が入り込んでしまうこともあります。セイタカアワダチソウやヒメジョオン,外来のイネ科の牧草や山だったらオオハンゴンソウなどです。そういうものが入り込むと,芽生えのときに競争に負けてしまい,外来種に占領されてしまいます。そんないろいろな理由で,花野がほんとうに少なくなってしまいました。
 谷戸田でも,手が草刈りしているうちはいいのですが,大型の農業機械が入ったり,除草剤がまかれたりすると,土手や畦道の花野が簡単に失われてしまいます。

●野花たちは一種のレストランであって,お客さんを招いています。衣装をまとったり,香水をつけたりして。花をみていると,しばしば虫がやってきます。わたしも皆さんと同じようにマルハナバチ大好きですが,マルハナバチってしばしばこんな格好をするんですよね。下向きに咲いている花に頭を突っ込んで,まるで帽子をかぶっているみたい。ハンショウヅルもアキチョウジも。このような花たちはなんで下向きに咲くかというと,ちゃんと理由があります。マルハナバチに来てもらいたいから,下向きに咲いているんです。こうやって花にぶら下がるには,アクロバチックな能力が必要で,かなりの腕力(ハチだから脚力)がなければダメなんです。マルハナバチは力が強いので,ちゃんとぶらさがることができるんです。マルハナバチにしかできない芸当といっていいでしょう。逆に言えば,下向きに花を咲かせば,マルハナバチしか来れなくなるということなんです。

●ツリフネソウの筒型の花はマルハナバチの行動と体格に合っています。タニジャコウソウの花もツリフネソウと同じ大きさと同じ形です。このような花はマルハナバチの体格にぴったり合っているために,もぐり込んだら,後ずさりして出て来なければなりません。後ずさりをするというのは,簡単そうに見えて,簡単ではありません。マルハナバチはできますが,ハナアブとかはできません。
 アヤメもそうです。雌しべと花びらで筒を作っています。花びらのプラットホームに虫が着地し,黄色い筋を頼りに筒の中にもぐり込んで,後ずさりして出ていきます。
 このような花はマルハナバチを呼んでいる花です。こういう花のもう一つの特徴は,蜜がどこにあるのか外から見てもわからないというところです。これらの花はある程度の大きさがありますが,この大きさもマルハナバチに合わせた大きさになっています。
 いろいろな花がありますが,外から見てお料理(蜜や花粉)が見えない。で,人間界も同じですが,だいたい高級なお店って路地裏にあって,知っている人にしか行き着けないようになっているんですが,花のレストランもそうで,複雑な形をしていたり,曲がりくねった奥のほうに蜜を隠していたりします。マルハナバチを呼んでいる花って,こんな高級フレンチみたいな店です。特別なお客さんだけ入れるようになっています。日本の美しい野花はマルハナバチによって支えられていると言っても過言ではないです。特に紫色の花が多いのも特徴です。

●タケニグサも咲くと思いますが,ぜひ確かめてください。タケニグサの花は糸のような雄しべがたくさん出ているんですが,この雄しべを揺らすと花粉がたくさん落ちてきます。細長い糸みたいなのは音叉の働きをします。固有振動数があるので,ある特定の音が与えられると共振して,揺れが大きくなり,そのとき,たくさんの花粉を落としてくれるようになります。
 タケニグサに来るマルハナバチを観察していると,来るまではブーンという音だったのに,タケニグサに来ると,違う音になります。しかも,その音がオオマルハナバチであっても,他の種類のマルハナバチであっても同じ音になります。そのときに落とされる花粉を体の毛で受け止めています。こういうのを英語でバズ・ポリネーションと呼んでいます。
 トマトもそうです。雄しべの先端に小さな穴があって,そこから花粉がこぼれるんですが,単に振ったりしただけでは落ちてきません。でも,マルハナバチが特定の周波数で羽ばたくと,花粉が落ちてきます。
 温室トマトでは外来種であるセイヨウオオマルハナバチを受粉用に使っていますが,野に放つと問題なので,終われば焼却処分することになっていますが,北海道ではセイヨウオオマルハナバチが逃げ出して,繁殖しているのが見つかっています。

●ハナアブがマルハナバチ媒花であるアヤメに来ているのを見ましたが,黄色い線が蜜に続いているのは理解しているようですが,うろうろするばかりで,花に入れないで,あきらめて飛び去ってしまいました。つまり,この花はマルハナバチ以外の虫を排除していたわけです。
 じゃあ,ハナアブはどうするのか? 自然界にも,高級フレンチばかりでなく,ファミレスみたいな花もあるんですね。ナナカマドの花に来ていました。小さな花がたくさん咲いていて,上向きに咲いています。どこに止まっても大丈夫だし,上から雄しべも雌しべも蜜のありかもよく見えています。後ずさりをする必要もないし,ぶら下がる必要もない。
 このように自然界にはハナアブ用の花もちゃんと用意されています。オトギリソウやフクジュソウやキクの仲間もそうです。上向きで,開けっぴろげで,上から見て雄しべや雌しべ,蜜のありかがよく分かるような花です。料理の中身がよく見えて,止まりやすくて,入りやすい,それから,なぜか,人間界のファミレスも黄色い外装のものが多いですが,自然界でも白とか黄色とか明るい色をしていて目立つのはハエやアブを呼んでいる花です。

●ハエやアブはマルハナバチに比べ,同じ種類の花から花へ運ぶ花粉の効率は高くないけれど,個体数が多いので,そこそこ花粉を運んでくれます。マルハナバチは個体数が少ないけれど,忠実に同じ花を訪れ,花粉を運んでくれます。リピーターのお客さんになってくれるということです。 ある花はマルハナバチ専門になるし,ある花はいろいろな虫が気軽に訪れるファミレスみたいになり,花は多様になっていきます。
 じつは,マルハナバチの花とアブの花では咲き方も違ってきます。マルハナバチの花は一面に群れ咲くことはしないで,点在しています。マルハナバチはリピーターなので,点在しても同じ種類の花に行ってくれるからです。アブの花では一面に群れ咲きます。アブはとりあえず身近な花に行ってしまうから,隣にも同じ種類の花が咲いていたほうがいいのです。にぎやかな商店街は,通りすがりのアブ狙いということでしょうか。

●では,スミレにはどんなお客さんが来るのか? スミレは虫の訪れが少ない花です。春先のスミレの花は結実率が1/3くらいです。それでも,待っていると,飛んできます。ビロートツリアブです。胴体と同じくらいの長さのストロー状の口を持っています。スミレは花の後ろに細長い筒がありますが,ちょうどそれと同じ長さです。キランソウもそうです。ジロボウエンゴサクも長い筒を持っています。スミレのことは昔から太郎坊と呼んでいました。こちら(ジロボウエンゴサク)は次郎坊です。花同士,細長い筒をひっかけあって,花相撲をするのです。スミレはスミレ科,ジロボウはケシ科で全然違う分類群ですが,同じような花の形をしている,その理由は,同じ虫に花粉を運んでもらっているからなのです。このように,春先に咲く,薄紫の細長い筒を持った花のお客さんはビロートツリアブです。

●野花にはいろいろな形があって,いろいろな色があるのは,いろいろなお客さんに店を開いているからだということがわかります。いったい誰のレストランなんだろう?・・・わかってない花もたくさんあります。でも,とにかく,たくさんの花が咲いているということは,たくさんのお客さんもいるということなのです。私たちが観察している自然はほんの一瞬,ほんの一部なので,なかなか全体像を理解することはできませんが,私たちの知らないところで,花とそれを訪れるお客さんとの関係がたくさん結ばれていて,それが何十万年も何百万年も続いてきた結果を,今,私たちが見ているということです。

●私たち人間の色の見え方に比べ,ミツバチは紫外線もよく見えています。反面,赤い色は見えていません。となると,コオニユリやレンゲツツジ,フシグロセンノウといった朱赤の花には何が来ているのか? ここにはアゲハの仲間が来ています。虫の多くは朱赤が見えていないのですが,アゲハの仲間には例外的に見えています。朱赤の花はアゲハチョウ媒花です。アゲハがコオニユリに止まると,花粉がべったり付きます。アゲハの羽根がバタバタしても簡単に取れないようになっています。しかも,雄しべの花粉は赤です。他の虫には見えていません。

●甲虫はとても不器用なので,平べったくて,どこに降りてきても大丈夫で,バタバタと花の上を歩くうちに花粉が運ばれて・・・というタイプの花です。タマアジサイなどです。

●花の中にはより多くの種類のお客さんに来てもらっている花もあります。誰もが立ち寄りやすい花です。クガイソウです。筒型ですが,そんなに深くなく,雄しべや雌しべが見えています。チョウもアブもマルハナバチも来ます。でも,観察していると,チョウやアブはぽっと来て,ぽっと飛び去ってしまいますが,マルハナバチは一番下の雌しべが突き出している花に止まり,らせん状にグルグル回りながら蜜を集め,上の方の雄しべが突き出している花まで行って,飛んでいきます。この行動は別の花の花粉をその花の雌しべに付け,その花の花粉を次の花に運ぶことになります。やっぱりマルハナバチが一番効率よく花粉を運んでくれる上得意さんです。

●花まちの裏通りには,マムシグサのような暴力バーもあります。妖しい色と姿と匂いがするのは,必ず裏があります。花の真ん中のこん棒状のものからはキノコの匂いが出ます。これに誘われてキノコバエがやってきます。中に入ると,花の内面がツルツルしているので,出られなくなってしまいます。でも,雄花の下にはちゃんと脱出用の穴が用意されていて,ここから出て行けます。でも,雌花には出口がないので,閉じ込められてしいます。切り開いてみると,犠牲者のハエの死体が出てきます。こん棒状のものの上にはネズミ返しならぬ「キノコバエ返し」があり,上に行けなくなっています。閉じ込められながら,雌花に花粉を運びます。

●乙女高原にはギンリョウソウがたくさんあると思いますが,ギンリョウソウは腐生植物といって,栄養をキノコからもらっています。真っ白で光合成をしていません。根は電線のコードのようになっていて,外側のビニールの部分がギンリョウソウ,内側の銅線の部分がキノコの菌糸とギンリョウソウです。根の塊を全体的にみると,まわりの木の根っこともつながっています。ギンリョウソウはキノコに養われているのですが,キノコはまわりの木とも共生関係を結んでいるのです。ギンリョウソウは透明感のある白で白いドレスをまとった妖精のようにも見えますが,じつは,本当に森の妖精なんです。自分ではなにも光合成をせず,稼いでいませんが,森の木全体に養われている植物なんです。マルハナバチがやってきて,蜜を吸っていくと言われています。実が可愛くて,ゲゲゲの鬼太郎の目玉オヤジみたいです。実はジューシーです。誰がたねを運ぶのかわかっていません。今のところ,モリチャバネゴキブリが齧っていたという目撃例があるだけです。
 ギンリョウソウと同じ仲間で,シャクジョウソウは風にたねを飛ばします。ウメガサソウもこの仲間で,みどりの葉っぱはつけますが,キノコに養ってもらっています。こういう植物は,生まれてすぐにキノコに養ってもらうので,たねを大きくする必要はなく,小さいたねをたくさん付けます。植物の中でもランと並んで,一番小さなたねを作る仲間です。イチヤクソウのたねもすごく小さくて,風に飛ばされるたねです。森の中でたくさん見つかりますが,取ってきて育てようと思っても育ちません。菌類から離されると,生きていけないのです。

●わたしは虫も好きです。虫やカエルや小動物のことも嫌わないでね。鳥の糞そっくりのイモムシも楽しいし,幼虫を直接出産するアブラムシもすごいです。

●私たちは自然のほんの一瞬しか見ていないし,知らないけれど,想像力を働かせたり,足しげく通ったり,私たちの方からアプローチすることで,一瞬しか見えていない自然も見えてくることがあります。一つのフィールドに足しげく通うことはとても大切で,継続的に見ることによって,一つの植物の成長や移り変わりや,たまたまの出会いがあるかもしれないし,いろんなものが変わりながら生きている姿も見えてきます。
 そういうことを継続することで,見えている自然も,見えていない自然もすこしずつ理解でき,いろいろなつながりも見えてくるようになっていくと思います。
 (※多田さんのお話をまとめたのはウエハラです。文責はウエハラにあります)

 講演終了後,質疑応答の時間を取り(実は木の実についてもとてもおもしろい話をお聞きしたのですが,長くなりすぎるので,ここでは省略),飯島さんの司会で閉会行事を行いました。ファンクラブ代表世話人の宮原さんからお礼のあいさつがあり,内藤さんから諸連絡をしていただき,フォーラムを閉会としました。
 その後,かたづけをし,お決まりの茶話会をしました。おいしい手作りの漬け物等をつつきながら,短い時間ですが,講師を中心に楽しく情報交換をしました。とっても充実した半日でした。
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2.【活動案内】 ●2012年度総会ならびに座談会●

日 時 3月10日(日)午後2時〜
場 所 山梨市牧丘総合会館 3階 大ホール

※今回は世話人の改選があります。世話人の任期は2年。立候補です。立候補してくださった方が総  会で承認されれば世話人です。世話人の互選によって3名以内の代表世話人を選びます。多くの方 が世話人になってくだされば,一人分の仕事量は少なくなりますし,より大きなこと,より多くのことに 取り組めるようになります。多くの方の立候補をお願いします。

※総会終了後,座談会を行います。毎年,座談会の前半では,話題提供者をお願いし,お話をお聞き してから,後半で懇談しています。ですが,今回はとくに話題提供者はお願いしないで,皆さんでゆっ くりじっくり懇談しようということになりました。
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