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    乙女高原ファンクラブ 公認
 乙女高原メールマガジン 第341号
 2016.2.13.
 発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町)
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NEW! 0.【ニュースニュース】
NEW! 1.【活動報告】乙女高原フォーラム(1/31)その2
     2.【活動案内】乙女高原観察交流会(3/05)
     3.【活動案内】ファンクラブ総会 (3/13)
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0.【ニュースニュース】

●1.第15回乙女高原フォーラムでの、いがりさんのギター生演奏をバックにした美しいスミレのスライドショー、とってもよかったですよね。いがりさんのウェブサイト「いがりまさし公式サイト 植物図鑑 撮れたてドットコム」のトップページには、「いがりさんの植物写真スライドショー+いがりさんの曲」ユーチューブ動画がありますよ。フォーラムのあの雰囲気がよみがえりますよ。必見です。
http://www.plantsindex.com/

●2.フォーラムの様子が山梨CATVで放映されることになりました。2月26日(金)~28日(日)。毎日午後9時から10チャンネルです。山梨市にお住まいの方、お見逃しなく!

●3.次回世話人会は3月2日(水)午後7時半から牧丘総合会館です。来年度の活動計画について話し合います。ファンクラブの会員であれば,どなたでも参加できます。ぜひどうぞ。

●4.「乙女高原の兄弟分」ともいえる甘利山で保全活動をしているNPO甘利山倶楽部では2月13日(土・今日!)午後2時から韮崎市民交流センター(ニコリ)で、山梨県森林総合研究所の大津千晶さんによる「甘利山における草原・人・シカの関わり~草原の花々の再生に向けた対策の提案」という記念講演があり、入場無料だそうです。

●5.(再掲)環境省箱根自然環境事務所と神奈川県立生命の星・地球博物館の共催で「箱根、丹沢、富士山、伊豆半島におけるニホンジカ対策の現状」というシンポジウムを開催するそうです。2月13日(土今日!)の13時~16時20分まで。会場は神奈川県小田原市の神奈川県立生命の星・地球博物館です。詳しくは以下のサイトをご覧下さい。
 http://nh.kanagawa-museum.jp/event/info/ev346.html

●6.「自然観察と絵本の読み聞かせを神社の境内で」という「おおぞらの下のおはなし会」今回は「さがしてみよう 春はどこかな?」をテーマに行います。笛吹市春日居町の山梨岡神社(国道140号沿いの春日居中学校の向かいを西に)。午前10時から12時。対象は小中学生ですが、小学生未満も保護者同伴ならオッケー。大人も見学ならオッケーです。主催・問い合わせは「おはなしのへや もも」馬場さん080-5046-9436

●7.(再掲)日本自然保護協会(NACS-J)の自然観察指導員講習会というと,自然観察会をする人を養成しようという日本でもっとも老舗の講習会ですが、土日を利用して行われるのが普通です。ですが、このたび、土日に休めない人たちのために平日開催するそうです。宿泊関係や博物館関係など、土日のほうが忙しい方々にとって朗報だと思います。3/22(火)~23(水)の1泊2日。会場は東京都八王子市の八王子セミナーハウス、定員50名、参加費はNACS-J会員の方は24,500円、NACS-J会員ではない方は29,500円(ただし、受講時に22歳未満の方は27,500円)だそうです。募集期間は2/4(木)~2/25(木)必着。詳しくは以下のサイトをご覧下さい。
http://www.nacsj.or.jp/katsudo/shidoin_schedule/2015/03/no5123.html
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1.【活動報告】 ●乙女高原フォーラム その2● 1月31日(日)

 いよいよスペシャルゲストいがりまさしさんのお話です。ファンクラブ世話人である小林さんからプロフィールの紹介があり、そのあと、始まりました。なお、お話したのはいがりさんですが、それを文章にしているのは植原です。したがって文責は植原にあります。

●いがりさん 「生物多様性の妖精・スミレのふか~くてひろ~い話」

◆乙女高原との縁
 忘れもしない1991年、その年は、わたくしがそれまで勤めていた印刷会社をやめて、植物写真家という生きようと歩きだしたその年だったのですが、名古屋市で行われました日本自然保護協会の自然観察指導員講習会を受講しました。2泊3日で、いろんな先生が来て、自然観察の仕方を教えてくださるんですが、そのときの講師のお一人が植原さんでした。そのときの植原さんの講習は今でも印象に残っています。ネイチャーゲームを駆使して、とてもわかりやすく、小さなお子さんでも自然に興味を持たれるだろう、そのやり方というのは、今思えば、今、わたくしがツアーに行って皆さんにお話したりする大きな礎(いしずえ)になっているのかなという気がします。
 そのときに、植原はさんが話されていた乙女高原に実際に行ってみたいなと思いました。それから何年後ですかね、ちょくちょく来るようになりました。通り掛かってみて、ちょっと時間があるから乙女高原へ行ってみようということで寄るようになりました。
 これだけたくさんのキンバイソウが見られるところって、そんなにないです。キンバイソウはどちらかというと大陸系の植物ですが、キンバイソウ自身は日本の固有種です。しかも、本州中部にしかありません。伊吹山や霧ヶ峰なんかにもありますけど、乙女高原ほど数が多くなくて、わたくしは乙女高原というと、真っ先にキンバイソウの花が思い浮かびます。
 そんなふうに乙女高原に来ていたんですが、2008年だったと思います、NHKの「趣味の園芸ビギナーズ」という番組に出ることになりまして、東京からある程度近くて、撮影の舞台になるようなところがないかと探していたところ、真っ先に思い浮かんだのが、キンバイソウの季節の乙女高原でした。そんな理由で乙女高原を訪れたこともありました。確か、そのときに植原さんにお会いしていたと思います。
 それが今日につながっていて、思えば長いご縁だなあと思います。

◆スミレが妖精?! 
 さて、今日お話するのはスミレ・・・「生物多様性の妖精」というのが付いていますけどね、これをフェイスブックで紹介しましたら、わたくしのスミレ友達から「え、スミレが妖精・・・どういうことだ!?」というクレームが付きました。中国語で妖精というのは、もともと悪魔という意味なんだそうです。英語のフェアリー(fairy)というのも、日本語の妖精というのとちょっとニュアンスが違います。妖怪に近いですね。ただ、悪魔ほどではなく、ときどき出てきていたずらをするといった感じの存在が英語のフェアリーです。どちらもスミレに対しては使わないかもしれません。日本人の独特な考え方かもしれません。

◆日本はスミレの都である
 日本はスミレの都である・・・こんなコトバがあります。これは大正から昭和にかけて活躍した中井猛之進(なかいたけのしん)という植物学者が残したコトバです。中国東北部や朝鮮半島の植物もよく知っていた猛之進は、日本列島はスミレがとても多いということを書き残しています。どのくらい多いかといいますと、60種です。種というレベルで60です。乙女高原のスミレ・リストにあるソラムキタチツボスミレは種レベルではタチツボスミレに含まれますし、ヒナスミレとフジスミレは変種関係なので、2つとも同じ種ということになります。
 ただ、これも人によって違うんですよね。人によっては56種という人もいます。分類の立場による違いです。62くらいにはなるんではないでしょうか。
 アメリカは82種です。アメリカの方が多いんです。中国には108種。もっと多いですよね。中国ではまだまだ見つかっていない種があり、増えるんじゃないかと思います。150くらいはいくんじゃないかと思います。オーストラリアは8種です。
確かにオーストラリアに比べれば、日本のスミレは多いんだけど、アメリカに比べれば少ないじゃないかと思われるかもしれませんが、面積を比べると、オーストラリアは日本の20倍です。オーストラリアのスミレ友達が日本に来たことがあるんです。「日本に来たら、きっとびっくりするよ。一カ所で10種も20種も見られるところがあるよ」と彼にいったら、「おまえがオーストラリアにきたら、もっとびっくりするぞ。1種見るのに何百キロも走らないとならないぞ」といってました。20倍の面積で8種ということは、そういうことなんでしょう。
 アメリカの面積は25倍、中国は26倍。面積を考えると、確かに日本の60種というのは非常に多いです。
 数年前に亡くなった、わたくしのスミレ友達のアメリカ人がいます。彼女はオーストラリアの市民権を持っていて、アメリカに住んでいて、長年ヨーロッパに住んでいました。行く先々でスミレを観察していて、日本や中国にも何回も来ています。彼女に「日本以外で、一カ所でスミレが10種類以上見られる場所があるか?」と聞いたら、「ある。アメリカに一カ所ある」と答えましたが、「いやまて」と数え直して「違った、9だ」と。一カ所でスミレが10種以上見られる場所は、日本以外知らないそうです。
 わたくしは、ロシアの沿海州で、一カ所で12種のスミレを観察したことがあります。ちょうど乙女高原くらいの広さのところで12種です。それ以外では、最近,外国でミスレを見る旅をすると、一回で1種新しいものが見られる程度です。1か所でたくさんのスミレが見られる場所がたくさんあるということで「日本はスミレの都である」というのは正しいと思います。

◆なぜ、日本列島はスミレの種類が多いのか?
 まずは気候帯が多様だということです。
 それを近縁の3種のスミレの分布を例にとってお話します。3つの中で、乙女高原にあるのはアケボノスミレだけです。ナガバノスミレサイシンは西日本の太平洋側が産地です。スミレサイシンは日本海側。雪の降るところです。東北の北の方まで行きますと,太平洋側にも出てきます。そして、2つの分布域のちょうど真ん中、太平洋側でもなく日本海側でもない内陸で、雪もある意味少ない場所に出てくるのがアケボノスミレです。山梨県・乙女高原は典型的なアケボノスミレの生育環境です。まあ、乙女高原は標高が高いですから雪は降りますけどね、日本海側に比べると少ない積雪量です。
 このように近縁のスミレが棲み分けておりますが、ナガバノスミレサイシンは雪が少なくて雨が多い雑木林、この近くだと、奥多摩・武蔵野あたり。高尾山なんかがナガバノスミレサイシンの多いところです。
 スミレサイシンは雪国です。新潟県の高柳町などです。
 アケボノスミレは雪が少なくて、冬寒いというところです。埼玉県の秩父などです。日本海側や太平洋側と比べると、森の中がとてもきれいですよね。雪が少なくて、寒さが厳しいと、下草が枯れてしまいます。ですから、森の中が静かな感じになります。
 3種のスミレの分布域の気候を比べてみましょう。代表して名古屋(ナガバノスミレサイシン)、松本(アケボノスミレ)、新潟(スミレサイシン)です。平均気温は名古屋>新潟>松本となります。降水量は名古屋と松本は∧型になりますが、新潟は∪型になります。名古屋と松本は形は似ていますが,名古屋は1500ミリぐらい、松本は1000ミリぐらいです。この1000ミリというのは、日本の主要都市の中で一番少ない降水量です。網走、福島なども1000ミリくらいです。

 南北に長いというのも、日本にスミレが多い理由です。
 気候帯という視点でみると,一番北は亜寒帯、東北地方や北海道南部は冷温帯です。本州の多くは暖温帯、九州の南部から南西諸島にかけては亜熱帯。さらに、高山帯には寒帯という、ほとんど樹木の生えないところもあります。熱帯以外の気候帯が日本列島には存在しているわけです。そういった意味で、日本の気候帯はとても多様です。
 北海道と南西諸島が日本でなかったらどうなっていたかを考えてみましょう。北海道には5種の固有種があります。南西諸島には6種です。ですから、日本のスミレは11種少なくなってしまいます。

 起伏が激しいのも理由のひとつです。
 わたくしは今日、東京方面から車で走って来ましたが、北岳が白く輝いていました。白根三山とは、これを見て名前が付いたんだなあと思いました。イギリスのグレートブリテン島を上から下にバサッと切って、断面を見てみますと、起伏があまりなく、なだらかなことがわかります。日本列島も切って断面を見てみると,高い山があるし、起伏の激しいことがわかります。
 起伏が激しいと、こんなことが起きます。キバナノコマノツメという、スミレの仲間の中では唯一、名前に「スミレ」が付かないスミレがあります。葉の形が馬のひづめのようだということで「駒の爪」です。高山植物といっていいと思いますが、珍しいスミレではありません。北半球であれば、一定の標高以上、一定の緯度以上であれば、たいてい出てくる普遍種なんです。ただし、ちょっと高いところでないと見られないので、本州中部の都市に住んでいる人にとっては、ちょっとあこがれのスミレです。
 北海道から九州まで見られます。一番南は屋久島の1900m以上のところ、もっと南、台湾にも分布しています。四国にも一カ所あります。1700mくらいのところです。紀伊半島にもあります。四国と同じくらいの標高です。中部山脈に来ますと,1700mくらいから出てきます。乙女高原にはないですよね? 乙女高原の標高でも、谷筋だと出てくることはあると思います。東北に行きますと1300mくらい。だいぶ低くなりましたね。北海道中南部で700m、北部になりますと、普通の里山みたいなところにもあります。礼文島に行きますと、海岸からすぐのところにもあります。
 このように一定の緯度・標高があれば必ず出てくるスミレなんですが、イギリスみたいな平坦な島だとキバナノコマノツメが分布しているところはほとんどありません。


◆キスミレの話
 ここからちょっとキスミレの話をしたいと思います。さきほどのキバナノコマノツメは高山植物でしたが、このキスミレはむしろ低い山にあるスミレです。山梨県はキスミレの分布域の東北限になります。
 愛知県にもあります。愛知県の現存する自生地は一カ所だけです。むかしは100株くらいありましたが、今は30株くらいでしょうか。かろうじて残っています。ここは草刈りをして、キスミレ群落がやっと保たれています。
 キスミレに関しては、興味深いことにウワサが多いんです。写真を見せると「子どものころに、○○で見たことがある」「遠足で行った○○山で見た」「東海道線のバラス(線路に敷く砂利)のところで咲いていた」「子どものころに河川敷で見た」「豊橋動植物公園が公園になる前に、雑木林があって、その中に草原・茅場があり、そこに咲いていた」などです。公園の話に出てくる草原というのはまさにキスミレの生育環境としてドンピシャリです。70歳くらいの方の、戦後すぐのころの記憶ですから、間違いないと思います。わたくしが聞いた範囲ではこれくらいですが、おそらく、戦後すぐのころにはキスミレはもっとたくさんあったのではないかと思います。
 標本が残っているところもあります。一カ所は開墾によってなくなったところです。もう一カ所はうわさ話なので、少し差し引いて考えなくてはなりませんが、戦後すぐのころの植物採集会で、リーダーが「あ、キスミ・・・」と言ったところで参加者がみんなで採って、なくなってしまったというものです。そういう話が残っています。かなり大げさだとは思いますが、乱獲があったことは事実だと考えられます。
 このように、戦後すぐにはほうぼうにキスミレの生息地があっただろうと思っています。キスミレの生息地・元生息地をみると、全部里山なんですよね。手つかずの山では見つかっていないんです。生息地が里山ばっかりだったから、戦後の開発ですべてなくなっていったということもあるんですが、とにかく近年急激になくなっています。

 キスミレの分布は世界で東アジアだけです。日本と朝鮮半島と中国東北部、ロシアの沿海州。一番北は北緯50度。北海道よりずっと北です。サハリン南部です。日本の北限は山梨県です。北緯35度くらいです。どうして、キスミレは日本では東北や北海道まで分布を広げられないのか? この疑問が残ります。
 南は宮崎県まで分布していて,熊本の阿蘇が有名な産地です。雪の少ない地方なんですね。新潟や山形にはオオバキスミレという別の大型のスミレがあります。で、草原や明るい林に生えます。そうなると、乙女高原と関連してきますが、こういうところは日本には少ない環境なんです。日本の降水量だと放っておくと森になってしまうので、人が手を入れない限り草原はなかなかできません。
 キスミレが多いところの代表として、わたくしがよく行くウラジオストックと日本の気候を比べてみましょう。ちょうど松本と似ているんですね。雨は冬より夏に多いけれど、全体の降水量は少なくて750ミリくらいです。松本が1000ミリくらいですから、松本より少ないです。日本で降水量が750ミリというところはありません。降水量が少ないですから、森がとても「きれい」なんです。笹がないということもありますが、全体に植生が薄いといいますか、森の中に藪がなく、すいすいと歩けてしまいます。チシマフウロやアツモリソウが咲いていました。さらに内陸に行きますと、もっと降水量が少ないところがあります。中国との国境近くだと、おそらく年間降水量が500ミリくらいです。もともと草原だったというわけでもないようなのですが、いったん森を伐ると、簡単にはもとに戻らない。放っておいても草原が続いてしまう、それくらいの降水量だと思います。
 わたくしは樹木が苦手で、日本の観察会で樹木の名前を聞かれても困るのですが、ここに来ると3つ覚えれば済みます。ヤエガワカンバとモンゴリナラとヤマナラシ(チョウセンヤマナラシ)です。ただ水辺に行くと、ヤナギが何種類かありますけどね。それくらい森林植生が希薄です。

 阿蘇では2月下旬から3月上旬にかけて山焼きをします。山焼きをやって黒焦げたところにキスミレがたくさん咲きます。阿蘇の降水量は年間3000ミリくらいです。ですが、山焼きをやっているので、キスミレの生育環境が保たれているというわけです。山焼きをやめると、おそらく、長くても100年くらいでキスミレがなくなってしまうと思われます。阿蘇でも山焼きができなくなっているところが非常に増えていまして、今、そういったところでは、キスミレのような草原性の植物が住む場所を失っています。
 一方、ウラジオストックの降水量は750ミリくらいですから、山焼きをやらなくても自然に疎林や草原が保たれるんですね。それで、キスミレがどこでも見られるというわけです。

◆日本列島の降水量はなぜ多い?
 まず、日本列島にたくさんの雨が降るわけを説明したいと思います。
 日本列島のまわりの気団は、まず、北東にオホーツク気団(高気圧)。6月7月にこれが張り出すと、東北に飢饉が起きます。冷たい高気圧ですね。
 北西にはシベリア気団。これが張り出してくると冬型の気圧配置になって、日本列島に雪や北風をもたらします。
 南西には揚子江気団。これは移動性高気圧で、春と秋におおわれると3日間くらい晴れが続きます。
 南東には小笠原気団。太平洋高気圧ですね。それから南に熱帯気団。台風をもたらします。
 このようにいろいろな気団に取り囲まれているんですが、ちょうどそのはざまに前線帯ができやすいんですね、梅雨前線にしろ秋雨前線にしろ。北海道には梅雨がないとよく言われますが、たしかに前線帯からはぎりぎり外れています。ウラジオストックも前線帯から少し外れていますが、ときどき、かかることがあって、そういうときは大雨になります。現在の東京の降水量グラフをみると,ピークは6月と9月です。梅雨と秋雨なんですね。ウラジオストックのピークは8月です。梅雨前線が8月にかろうじてウラジオストックにかかるからです。
 2万年くらい前(最終氷期)は、これらの気団は全体的に南に下がっていただろうと考えられています。そうすると、前線帯も南にずれますから、日本列島にはかかりません。当時の日本列島は寒かっただけでなく、乾燥していたと推測されます。

 もうひとつ。雪の降る仕組みです。
 日本海の上をシベリアからの風が吹いてくると、新潟などの山に当たって、雪が降ります。
 この大きな要因は対馬暖流です。対馬暖流が日本海に流れ込んでいるので、日本海は温かい海になっています。湯気が湧いているようなところに風が吹きますから、とても湿った風が日本に吹いてくるわけです。それでたくさんの雪が降るというわけです。ちなみに、世界の最大積雪記録は日本の伊吹山で11mだそうです(1927年2月14日に積雪量1182cm)。また、世界の豪雪都市(小さい町は除く)上位3位はすべて日本です。青森・富山・札幌です。それくらい日本列島は雪が多いということです。もっというとね、冬季オリンピックの開催地で、最も低緯度だったのが長野です。緯度が低いのに雪がたくさん降る。結果として、夏に30℃になるのに、冬に3m雪が降るのが新潟みたいなところで、世界でも稀なエリアなんです。
 氷期の日本列島がどうなっていたかというと、列島が大陸と陸続きでした。対馬海流は流れ込めないので、日本海は冷たい湖のような海でした。そうすると、いくら風が吹いても、日本列島には雪が降らないですね。

 で、氷期の日本列島は気温も低かったけど、雨も雪も少ない、乾燥した気候だったんです。ちょうど今の西日本がウラジオストックみたいな気候だっただろうと言われています。これは花粉分析なんかで植生を調べている人たちも、その裏付けをしています。(つづく)
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2.【参加募集】●第4回 乙女高原観察交流会●

●3月5日(土)9時 道の駅「花かげの郷 まきおか」に集合→相乗りで乙女高原へ

●乙女高原ファンクラブとしての行事でなく、参加者各自の自主的活動として行うもので、活動に伴う旅費や飲食、傷害保険などすべて自己責任となります。
●途中からの参加や、午前中だけの参加など自由ですが、解散時間の目安は、現地3時、道の駅3時半とします。
●雨天の場合などは現地には行かず、道の駅での交流会にしたり、早めに散会するなど、参加者各自の意思で決めてもらいます。
●参加者は、乙女高原ファンクラブのメルマガメンバーとしますが、お知り合いを同行されることは自由です。
●乙女高原観察を通した交流目的のため、参加者間で情報を共有できるように、乙女高原ファンクラブ世話人会の了承のもと、メルマガなどを利用させていただきます。

※雪が積もっている可能性が非常に高いので、「スノーシュー」「アイゼン」「(スパイク付き)長靴」といった雪(山)用の装備をご持参ください。サングラス、リップクリーム等もあるとよいと思います。
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3.再掲【活動案内】 ●2015年度総会●

日 時 3月13日(日)午前10時~(準備は9時半から)
場 所 山梨市牧丘総合会館 3階 大ホール

次 第
1.開会のことば
2.代表世話人あいさつ
3.議 事
 ①2015年度活動報告
 ②2015年度収支決算報告
 ③会計監査報告
 ④2016年度活動計画案
 ⑤2016年度収支予算案
 ⑥その他
4.その他
5.閉会のことば
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