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 乙女高原ファンクラブ 公認
乙女高原メールマガジン第430号   2020.2.20.
 発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町)
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  ▲▼ もくじ ▼▲
NEW! 0.【ニュースニュース】
    1.【活動報告】乙女高原フォーラム    1月26日(日)
NEW! 2.【活動案内】乙女高原自然観察交流会  3月07日(土)
    3.【活動案内】2019年度総会     3月15日(日)
NEW! 4.【活動案内】乙女高原フェロー
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0.【ニュースニュース】

●1.天気が心配されましたが、1月26日に「乙女高原フォーラム」が無事開催され、61人が参加してくださいました。終了後、多くの方が茶話会に参加してくださり、椅子が足りないほどでした。茶話会後、駅前の居酒屋さんで「二次会」をしましたが、こちらもにぎやかでした。参加してくださった皆さん、ありがとうございました。須賀さんのお話は順次、文字にしてお伝えしていきます→1

●2. (再掲)乙女高原ファンクラブ2019年度総会を3月15日(日) 午後2時より、牧丘総合会館(山梨市役所牧丘支所と同じ建物。ファンクラブの世話人会を開催している施設)で開催します。今から予定に入れておいてください。総会後の座談会では、「山梨むかしがたりの会 きしゃごグループ」の木曽川さんらに「むかしがたり」をお願いしました。「焼山峠の子授け地蔵」「甲斐の湖」「笛吹権三郎」などです。楽しみにしていてください→4

●3.2月15日、乙女高原の生態系モニタリング調査に行ったところ、杣口~柳平途中の道路脇の池にて、ヤマアカガエル産卵を今年初めて確認しました。11日にはありませんでしたから、12~14日の間に産んだものと思われます。9腹分ありました。周りに雪はまったくなく、池に氷はまったくありませんでした。

●4.乙女高原ファンクラブ普通会員の皆さんにニュースレターをお送りしました。発送作業は井上さんにお願いしました。井上さん、ありがとうございました。中に総会の出欠ハガキも同封されていたと思います。投函はできるだけ早くお願いします。

●5.2月16日、町の駅やまなしの展示替えをしました。乙女高原で見られるスミレ30種類の写真がどーんと30枚飾ってあります。山梨市駅前です。近くに来られた際にはのぞいてみてください。

●6.2月16日、内藤さんにも立ち会っていただき、駒田さん、奥山さんお二人の監査員による会計監査が無事終了しました。内藤さん、駒田さん、奥山さん、お忙しいところ、ありがとうございました。
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1.【活動報告】●乙女高原フォーラム● 2020年 1月26日(日)

 朝はまだ雨が降っていました。所によっては雪だったようです。フォーラム会場の「夢わーく山梨」に着くと、すでに駒田さんがいらしてました。続々とスタッフが集まってきたので、続々と準備が進められました。今回のスタッフは市観光課3人、峡東林務環境事務所県有林課3人、ファンクラブ14人の計20人です。例年だと廊下に受付場所を設けますが、今日は寒いのでホールの後方に受付場所を設けました。その隣を展示スペースとしました。「須賀さんの本コーナー」、「ファンクラブのコーナー」「県有林のコーナー」の3つを設けました。
 講師の須賀さんは前日の夜に山梨に入り、ホテルに一泊していただきました。今日の午前中は万力公園の中を歩いてきたそうです。霞堤を見ていただきました。

 午後1時、市観光課武川リーダーの司会でフォーラムが始まりました。高木市長は他の公務のため欠席。メッセージが代読されました。
 その後、ウエハラが進行を担当しました。まず、ファンクラブ代表世話人の三枝さんがスライドを見せながら乙女高原ファンクラブの1年間の活動報告をしました。次に、乙女高原案内人の山本さんが自然観察交流会と夏の案内人活動の報告を、これもスライドを見せながら報告。楽しい写真をどんどん見せるというやり方でした。
 続いて、乙女高原フェローの説明と、フェロー認定者への認定証・記念品贈呈です。説明は山本さん、贈呈はファンクラブ代表世話人の古屋さんでした。今年、乙女高原フェローとして認定されたのは、岡村さん、角田さん、佐野さん、駒田さん、そして小学生のななみさんの5名でした。5人には、それぞれ好きな色のマグボトル(保温水筒)が贈呈されました。乙女高原ファンクラブの活動に10回参加すればフェローです(細かなルールがありますが→4)。まだの方はぜひ来年のフォーラムでフェロー認定を狙ってくださいね。

 そしていよいよ、今回のスペシャルゲスト須賀 丈さんのお話です。井上さんの講師紹介後、「草原を守れば,つながり復活?!」のお話が始まりました。お話終了後、会場からの質問に答えていただきました。マイクを司会の武川さんにお返しし、古屋さんのお礼の言葉、ファンクラブ世話人の芳賀さんから諸連絡があり、フォーラムが終了しました。
 片付け後、会議室をお借りし、有志で須賀さんを囲んだ茶話会を行いました。なんと22人も残ってくださいました。つけものやお菓子を頬張りながらお茶を飲み、情報交換しました。
 さらにさらに、今回は2次会も開催。駅前の飲み屋さんで打ち上げを行いました。こちらには6人が参加しました。こうして、今年も充実した乙女高原フォーラムが終了しました。

※以下、ウエハラが録音を聞きながら文字起こしをしました。話し言葉をそのまま書き言葉にするとわかりにくいところは修正しました。したがって、文責は植原にあります。

◆大阪で生まれ、長野に暮らしています
 私が勤めている環境保全研究所は長野県立の研究所で、私はそこで昆虫の生態を担当しています。2004年に長野県のレッド・データ・ブックを作った折に、絶滅危惧種の多くが草原に生息地を持っていることに気が付きました。昆虫を守るためには草原環境を守らなければならないことに気づいたわけです。と同時に、草原を守ることは想像以上に難しいということにも気づきました。というのも、かつては草刈りや野焼き、放牧によって維持されてきた草原ですが、現在の生活では、草の利用はほとんどなくなってしまいました。そんな中で、どんな取り組みをすれば草原の保全が可能なんだろうか?-というところから興味を持ち始めました。
 その当時、すでに乙女高原ファンクラブの活動は行われていまして、2009年に乙女高原をこっそり見せていただきに来ました。そのころから、皆さんの活動がたいへん参考になるなと拝見させていただいていました。送っていただいた資料やさきほどの活動報告を見せていただき、改めて、皆さんの活動を仰ぎ見るような気持ちになったわけですが、私は、活動を率先してやるというよりか、県の職員そして研究者ですので、市民と行政と研究者をつなぐような立場で、コミュニケーションをどうとっていけばいいのか、いかにして草原の価値を社会で共有していくか、そんなことを考えながらお話をしたり、文章を書いたりする機会が多くありまして、そんな経緯から今回お招きいただいたのかなと思います。
 私がおもに活動している霧ケ峰は、乙女高原と同じような課題を抱えています。それにも触れながら、お話を進めていきます。

 私は大阪生まれです。万博開催のときは幼稚園児でした。その翌年に環境庁(当時)ができました。その翌年の72年にはストックホルム国連人間環境会議(環境に関する初めての国際会議)が開催されました。当時は、環境問題というと公害の時代でした。光化学スモッグが出て、学校が休みになるなんてこともありました。当時、大阪で子ども向けの観察会を開催する大人たちがいて、そんな会に参加したことから自然に興味を持ち、山登りを始め、高校では山岳部に入りました。
 長野県に来たのが1996年、バブルが終わり、低成長の時代でしたが、長野はまだオリンピック前でしたので開発が進められていて、オリンピックが終わったとたんに開発が終わって経済がどんどん縮小する時代になりました。
 私が子どものころは人口が増えて、経済も発展していく裏側で、自然がどんどん開発されていきました。私が育ったのは千里ニュータウンというところですが、里山を壊して造成された住宅地です。ですので、当時は、自然保護というと開発から自然環境を守る、いかにして開発させないかというのが中心でした。
 ところが、私が長野に来て、特に2000年以降は人口減少が始まり、草原の問題に象徴されますように、人が自然に手を入れなくなったことによって、失われていく生き物たちがいることが目立つようになってきました。

 私は大学でハナバチの研究をしていましたから、いろいろなところで観察すると、高山にも草原にもマルハナバチはいるのですが、種類が違います。大学のころはミツバチの研究もしていましたからマレーシアやインドネシアにも行きました。場所が違えば、生えている植物が違うし、そこに来る昆虫も違います。このように土地ごとに違った植物や昆虫の集まり・生物群集があって、特有の生物多様性が成り立っている、しかもそこに人の暮らしや文化もかかわっているということに興味を持つようになりました。特に、草原の保全を考える上では、人の暮らしとか歴史・文化をよく考えないといけないと考えるようになりました。

◆講演のポイント
 現状→グローバル化が進み、産業社会の中で様々な問題が起きている。
    地域の自然と文化が分断されつつある。
 提案→草原の価値をみんなに見えるようにする、体験化することによって
    自然と文化をつなぎなおすことができないかな。

◆講演の内容
 1 why  なぜ草原とのつながりなのか?
        地域の方々が持っている生活の知恵や知識などの在来知に注目したい。
 2 what 草原の何とつながるか
        草原利用の歴史と文化
 3 how  具体的にどんな方法でつながりなおしていけばいいのか。


◆地域の自然と「在来知」

●「もの」から「こと」へ●山梨県も同じだと思いますが、長野県では人口減少が始まっています。歴史上、類のないよう速さで人口増加が起こり、そのあとで、また同じようなスピードで人口減少が起こり、高齢化も進んでいます。見方を変えれば「成長」から「成熟」へということだと思います。物は足りたので、違う形で社会を充実させていく時期だと思います。その指標の一つとして家計消費があります。1970年ごろは家計の多くは物を購入して所有することに使われていましたが、ここ数十年の間に質が変化しておりまして、サービスに対する支出が増えています。言い換えれば、物は十分足りていて、手に入れたいと思っている価値の物差しが「もの」から「こと」へ変わってきているといえます。これは草原の「草」をどうとらえるかということとつながってきます。
 また、「田園回帰」と言われているのですが農山漁村に定住したいと思っている都市住民があらゆる年齢層で増えています。山梨県も長野県と並んで、首都圏で調査すると「移住したい」という希望者が多い県です。
 外国人旅行者も急増しています。外国の方々が日本に来られるときに、何を求めてくるかというと、里山の文化というのがあるんじゃないかなと思います。木曽には中山道が通っていまして、古い宿場町があります。近年、外国の旅行者が急増しています。妻籠と馬籠を結ぶ峠道を歩いているハイキング客の7割は外国人です。その方たちが飛騨街道に入ってきますと開田高原で、そこから岐阜県に向かうわけです。そこで、地元では英語も併用したマップや案内板を作っています。私は外国人になったつもりで丸1日、開田高原を歩いてみました。馬を祀った馬頭観音があったり、ソバ畑があったり、御岳山が見えたり、キキョウの花が咲いていたりと、とてもきれいな景色でした。ここで街灯を見かけました。馬のレリーフがかざりで付いていました。だけど、今、開田高原に行っても、馬はいないんです。「これはなんだろう?」と、おそらく外国人の方は思うのではないかと思いました。

●旅人視点で考える●「旅人にとって田舎の風景ってなんだろう?」という視点で考えてみたいと思います。フランスの田園風景を見ると、日本のものとはあきらかに違います。自然は場所によって違いますし、異質性を感じさせてくれる要素にもなります。農村の風景であれば、そこに自然と文化とのつながりが、地域の郷土色として感じられます。ある意味で、固有性です。郷土料理もそうですね。それがその瞬間あるだけでなく、過去から未来へとつながっていく時間の流れの中でできあがったものであり、旅人はそこに行って、それに出会うわけです。そこにしかない風景や文化は、その地域にしかない資源ですから、これらをうまく使えば地域の発展に役立つ財産として使えるわけです。

 風景の背後には生物の成り立ちがあって、それを考えるには生物多様性という言葉が便利です。生物多様性は地球上の生物がつくりだす、さまざまな環境の全体を言い表すものですけれども、地域に着目すると、その地域が持っている自然の特色ということになります。その中には遺伝子から種・生態系といろいろなレベルでの多様性があるわけですけれど、そのようにして、地域自然を丸ごと見る、あるいは地域の自然の、他とは違う特色を見るという視点につながると思います。
 そういう視点で地球上を旅する人のことを考えると、そもそも私たち現生人類ホモ・サピエンスは約7万年前にアフリカから世界各地に広がっていきました。約1万年前までには南米の端までたどり着きました。その間にはいろいろな環境があって、それぞれの地域で生きる術を見出してきました。その地域に固有の文化を発展させてきたということでもあります。そのような地域ごとの文化や自然の中には、現在まで続いてきているものもあります。

●生物文化多様性●そういった特色を求めて、今でも旅する人がいるわけです。私たちが外国に行ったときにも、それを感じるわけです。地球環境の多様性から生まれる人間生活の多様性のことを、最近、生物文化多様性というようになってきています。これは言語の多様性、これは地球上には全部で6000くらいあるといわれておりまして、その地域の言語に結び付いた文化があり、その文化と結びついた生物の多様性があるわけで、言語と文化と生物それぞれの多様性の結びつきを生物文化多様性と呼ぶわけです。具体的には、日々の生活の中で生物資源を利用するための知識や知恵というふうにも考えることができます。
 韓国の釜山とインドネシアのスラウェシの魚市場に行きましたが、海域が違えば住んでいる魚が違います。当然、水揚げされて市場に並ぶ魚も違います。それが生物学的に違うだけではなくて、その土地固有の言葉で魚を呼び合って売り買いし、その土地固有の調味料等で、その土地固有の調理をし、郷土料理を作るわけです。その時に使われる言語や知識というものが「在来知(伝統知)」と呼ばれるもので、生物文化多様性の中身を決めているものです。地域の生活・文化・言語に根差し、周囲の環境や生物の利用や信仰などにかかわる体系化された知識です。

 長野県のある山村には3種類のダイズの品種が植えられてれいます。この中には伝統的な品種もあれば、農業試験場で近代的な育種技術によってつくられたものもあります。それぞれ味も違いますし、利用の仕方も違います。それぞれの畑に合った品種はどれかということを耕作する人は判断してつくっているわけです。つまり、科学的な知識と在来知が混じりあった形で今でも日本の山村では農業が営まれているわけです。
 近年、ダイズの品種は画一化しつつあります。そうなってくると、在来知も失われていくことになります。多様な品種があって、多様な知識があれば、環境が変わったとき、あるいは、経済的な環境が変わったときも、対応できるクッションになるといわれていますが、画一化するとそういった柔軟性も失われるのではないかとという懸念が広がっています。

●ローカル資源利用からグローバル資源利用へ●日本は江戸時代まではローカルな資源を利用する農耕社会でしたけれども、この100年あまりの間にグルーバルな資源利用をする産業社会へと大きな変貌を遂げました。歌川広重「冨士三十六景」“甲斐大月の原”には、キキョウやオミナエシなど草原性の植物が描かれています。当時の人たちはこういった草を刈って肥料にしていましたので、こういった景観が普通に見られました。
 今は、こういった景観が見られなくなりましたよね。これは資源を外国から買うようになったということと関係しています。日本の近代化100年の歴史そのものが資源利用をグローバル化していく歴史でもあったのです。アメリカの環境歴史学者のトットマンという人が書いています。その中で里山・農村に暮らす人々の日々の知識そのものも在来知から科学的な知識へと置き換えられてきました。

 そうやって日本の消費生活が外国からの資源を利用するようになって、海外の生物資源を損なっているということが起こっています。これは日本だけのことではありませんが、グローバルな産業社会が共通に持つ課題として指摘されています。エコロジカル・フット・プリントという指標があります。人一人が生きていくのに必要な自然環境の量を面積として表したもので、日本人は6/7が海外、残りの1/7だけが国内の資源を利用しています。そういうことを通して、海外の自然や文化にも影響を与えているのが現在の私たちの生活なわけです。

 その一方で、里山の自然には手が入らなくなり、失われつつあるわけですけど、かつて生物資源を利用していた在来知は森林でいうと二次林(里山林)、草原でいうと半自然草原と結びついていました。今では人の手の入らない自然林・自然草原と、人工林・人工草地という二極分化したとらえ方が一般的ですが、中間にある二次林・半自然草原が人々の生活と結びついた在来知の場であったわけです。

●在来知から科学知へ●長野県のある場所で圃場整備があり、景観が大きく変わりました。畔が広くていろいろな野草が咲いていました。その中にはかつては薬草として使われたものもあり、絶滅危惧種であるホンシュウハイイロマルハナバチがいる場所だったのですが、整備でいなくなってしまいました。圃場整備をするには科学的な知見が必要ですから、科学知が導入されて、農村の景観が変わり、暮らしも大きく変わりました。このことによる恩恵があった一方で、失われた在来知や自然もありました。その両面を見る必要があると思います。

 長野県では昔、普通に盆花の風習がありました。研究所で聞き取り調査をやっているのですが、キキョウやオミナエシやナデシコなどの野草が先祖の魂の依り代となり、お盆が終わると、野辺送りをするわけです。野の風景の向こう側にあの世があるわけですから、身近にある野の風景そのものが、ある意味、あの世ともつながる空間として意味をもっていたのかなあと想像するわけです。こういったことで、周りの景観と結びついた心の世界、そういった意味での文化も失われてきた可能性があります。こういう行事は高度経済成長の時に衰退し、簡略化されました。今は盆花をホームセンターで買ってくることが多くなりました。

 山里の民宿の食事でもフキや川魚など山里ならではの食材も出ますが、刺身とかエビとか、他所からの食材も出てくるわけです。たいへんなごちそうなわけですが、ここの風土を感じさせてくれる食べ物というとフキや川魚だと思うわけです。現在の日本の農村の生活の中で、地域や生活、自然に対する利用の在り方というのはこういうふうに、外の生物資源と身の回りの生物資源の利用が混じりあっているのが普通なのではないかと思います。民宿のメニューはその象徴だと思います。

●生物多様性の危機●生物多様性には4つの危機があります。第一の人間活動や開発による危機は、私が子どものころによくあったものです。今でもありますし、問題がなくなったわけではありませんが、むしろ、第二の人間活動の縮小による危機や、第三の外来種など、人間が生態系に持ち込むものによる危機、さらには、気候変動による第四の危機があり、かつての開発を防ぐという形のものだけでは対応できない、新たな自然環境への脅威が出てきています。
 私は半分行政におりますのでよくわかるのですが、第一の危機への対応のしくみはすでに行政の中にあるんです。十分に機能しているかどうかは皆さん意見があるかもしれませんが、環境アセスメント制度や国立公園制度など、担当者がいて、対応する体制というのは一応できています。
 だけど、第二、第三、第四の危機については、まだ行政の中に確立した体制は、少なくとも地方自治体レベルでは確立していないのが普通です。長野県では「生物多様性ながの県戦略」の見直しの時期にかかっています。2012年に作って2020年までの行動計画を立てておりますので、今年が見直しの時期なんですけど、それにあたって、県内の市町村の担当者にアンケートをしました。「皆さんの市町村で生物多様性にとってどんなことが重要な課題ですか」。一番多い回答が外来種です。外来種はターゲットがはっきりしているので、行政の人にもわかりやすいです。ちゃんと駆除できるかどうかは別として、何をすればいいかはイメージできます。これから外来種対策はある程度できてくるだろうなと思います。
 むしろ難しいのは第二の危機と第四の危機です。第四の危機は地球全体の足並みがそろわないとどうにもならない問題です。長野県や山梨県など山がある県だと、周囲の暑くなった環境で生き延びられなくなった生き物が山に登ることで生き延びられる、山が逃避地になる可能性があります。景観を連続させることで、逃避地として機能させる必要があります。できるできないは別として、やるべきことは第四の危機もイメージできます。

 ところが、第二の危機については、自然環境をどうにかするという問題ではなく、私たちの生活というか生き方にかかわるような問題なので、難しいなあと思います。それが草原にかかわってきます。
 乙女高原でもマルハナバチの観察をされていますが、長野県にもマルハナバチはたくさんいまして、10種類います。口吻の長いものと短いものがありまして、短いものは浅い花、長いものは深い花に適応しています。マルハナバチの中で絶滅の危険性が高く評価されているのは、高山・亜高山に分布域があるニッポンヤドリマルハナバチ・ナガマルハナバチと、半自然草原に分布域があるクロマルハナバチ、ホンシュウハイイロマルハナバチ、ウスリーマルハナバチです。高山・亜高山の環境は今後、急速に気候変動によって生息環境が変化していきます。すると、生息しにくくなる可能性がありますが、その因果関係などは実証できる段階ではありません。情報不足という状態にあります。
 それに対して、半自然草原を主な生息場所とする3種は、採草地やスキー場、田畑の畔のような環境にしか生息できないものですから、こういった環境がなくなると、ほぼ生息できなくなります。どうやったらこういうものを守れるかということですが、管理放棄による森林化などが絶滅危惧の背後にあり、さらにその背後にはローカルな資源利用からグローバルな資源利用に変わったという人類の文明全体の転換があります。その結果として生物多様性と地域文化が同時に消滅しつつあるということです。このような草原性の希少種としてマルハナバチ以外でも植物、チョウなど多くの生き物が知られています。
 二次草原をどうすれば守れるかということを考えたときに、地域づくりと広い意味で位置付けるしかないかなと考えています。地域づくりで欠かせないのが人々の参加です。参加するためには何が必要かというと、場所とコンセプト、どこで、なにをするかということです。例えば、乙女高原で、乙女高原の自然を守るといったことです。それによって、そこにしかない地域の資源を守るという発想が考えられます。景観や文化や在来知を守ろう、それはいろいろな知識や人とのつながりで守ろうということを今、考えています。

ここまでの話をまとめます。

  Why? なぜ草原との“つながり”か?
1. 地域の自然と「在来知」

近 代 化・グローバル化 →生物多様性と地域文化の危機
地域資源: そこにしかない自然と文化のつながり →景観・文化・在来知
在 来 知: 生活の基盤,歴史の遺産 →“つながり”で守る自然と文化

    (つづく)
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2.【活動案内】 ●乙女高原自然観察交流会● 2020年03月07日(土)

・日  時 03月07日(土)午前9時~午後3時ころ (小雨決行)
・集  合 道の駅 花かげの郷まきおか 9時
・持 ち 物 弁当・飲み物・雨具 その他、あれば観察用具


  ■乙女高原観察交流会■
●乙女高原ファンクラブとしての行事でなく、参加者各自の自主的活動として行うもので、活動に伴う旅費や飲食、傷害保険などすべて自己責任となります。
●途中からの参加や、午前中だけの参加など自由ですが、解散時間の目安は、現地3時、道の駅3時半とします。
●雨天の場合などは現地には行かず、道の駅での交流会にしたり、早めに散会するなど、参加者各自の意思で決めてもらいます。
●参加者は、乙女高原ファンクラブのメルマガメンバーとしますが、お知り合いを同行されることは自由です。
●乙女高原観察を通した交流目的のため、参加者間で情報を共有できるように、乙女高原ファンクラブ世話人会の了承のもと、メルマガなどを利用させていただきます。

※今年度の予定
済①04月06日(土)集合:09:00・道の駅  兼:ヤマアカガエル産卵調査
済②05月12日(日)集合:13:00・乙女高原 兼:スミレ観察会
済③06月01日(土)集合:08:30・道の駅  兼:黄色いスミレ観察会
済④07月06日(土)集合:10:00・乙女高原 兼:谷地坊主観察会
済⑤08月03日(土)集合:10:00・乙女高原 兼:マルハナバチ調べ隊
済⑥09月07日(土)集合:10:00・乙女高原 兼:マルハナバチ調べ隊
済⑦10月05日(土)集合:09:00・道の駅
済⑧11月02日(土)集合:09:00・道の駅
済⑨12月07日(土)集合:09:00・道の駅  氷華がいっぱいみられました。
   【2020年】
済⑩01月04日(土)集合:09:00・道の駅 冬芽の観察をしました。
済⑪02月01日(土)集合:09:00・道の駅  セミのゾンビが見られました。
 ⑫03月07日(土)集合:09:00・道の駅
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3.【活動案内】●2019年度総会●    3月15日(日)

日 時 3月15日(日)午後2時~(準備は1時半から)
場 所 牧丘総合会館(山梨市役所牧丘支所)2階 
次 第
 1.開会のことば
 2.代表世話人あいさつ
 3.議 事
  ①2019年度活動報告
  ②2019年度収支決算報告
  ③会計監査報告
  ④2020年度活動計画案
  ⑤2020年度収支予算案
 4.その他
 5.閉会のことば

※座談会は、「山梨むかしがたりの会 きしゃごグループ」の木曽川さんに「むかしがたり」をお願いしました。「焼山峠の子授け地蔵」「甲斐の湖」などです。
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4.【活動案内】●乙女高原フェロー●

 乙女高原ファンクラブの活動(※)に参加してスタンプ10個集めると「乙女高原フェロー」と認められ、乙女高原フォーラムで記念品が贈呈されます。
乙女高原ファンクラブ会員がこの奨励制度に応募するには「フェロー制度参加証」を発行してもらい、裏面に「乙女高原スタンプ」を押してもらうことが必要です。言ってみれば、スタンプ・カードです。

フェロー制度参加証の有効期間は発行日から3年間です。

参加証発行日以前に参加した活動については、2017年4月1日以降の活動に限り、かつ、発行日から過去1年間に遡り有効です。

※乙女高原ファンクラブの活動
・乙女高原フォーラムに参加すること(必須 ただし中学生以下は必須としない)
・遊歩道作りに参加すること(必須 ただし中学生以下は必須としない)
・草刈りに参加すること(必須 ただし中学生以下は必須としない)
・世話人会に参加すること
・スミレ観察会に参加すること
・マルハナバチ調べ隊に参加すること
・ヤマアカガエル産卵調査に参加すること
・自然観察交流会に参加すること

○メールマガジンや会報、ブログでお知らせした活動で、重複して参加できます。
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