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乙女高原ファンクラブ 公認
乙女高原メールマガジン第519号 2023.9.13.
発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町)
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▲▼▲ もくじ ▼▲▼
NEW! 0.【ニュースニュース】
NEW! 1.【活動報告】花と昆虫のリンク調査8月 8月19日(土)
2.【活動案内】花と昆虫のリンク調査9月 9月16日(土)
3.【活動案内】植生調査 9月23日(土)
NEW! 4.【小 説】虎を抱えた乙女 宇津 貴史
■乙女高原自然観察交流会
■街の駅やまなし・乙女高原展
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0.【ニュースニュース】
●1.9/2(土)「マルハナバチ調べ隊初秋編」、9/5(火)「笛川小学校5年生との自然観察」、9/12「日下部小学校4年生との自然観察」が、どれも無事終了しました。スタッフとして参画してくださった皆さん、本当にありがとうございました。おかげ様で、参加された皆さんが、とてもいい顔をして帰られました。
●2.山梨CATV「教えてうえちゃん いつでもどこでも自然観察」の「乙女高原スペシャル」が、いよいよユーチューブ・チャンネルで公開されました。約1時間、乙女高原三昧の番組です。ぜひ、ご覧ください。
https://youtu.be/g_9EuQ3A3f4
●3. 8/19(土)、高槻先生のご指導で行った「花と昆虫のリンク調査・8月」のレポートを小学校5年生の純太くんが書いてくださいました。純太くん、ありがとう、また参加してね!! ➝1
●4. 9/16(土)、今度の土曜日は「花と昆虫のリンク調査」です。高槻先生のご指導を受けながら、遊歩道を歩いて花に来ている虫を探しては記録します。参加してくださる方が多いと、調査を同じ時間帯に行うことができます。9:40集合。雨が降った場合の予備日は翌9/17(日)です→2
●5. シカ柵設置直前から年に一度行っている高槻先生指導の植生調査ですが、今年は9/23(土)に行います。草原内にポールが10本立っているのですが、毎年、そこで植生を調査しています。9:40集合。雨天決行です→3
●6.八王子にお住まいの宇津貴史さんは、2020年に初めて乙女高原を訪れて以来、すっかり魅了され、夏季は毎週通っているそうです。チョウを専門に写真撮影しており、乙女高原周辺で観察を続ける中で出会った様々な事実を元に、小説を書いてくださいました。ぜひお読みください。
●7.(再掲)2023年度第3回の乙女高原連絡会議・乙女高原ファンクラブ世話人会は明日・9/14(木)午後7:00から山梨市役所牧丘支所(旧牧丘町役場)です。ご都合がつく方は、ぜひのぞいてみてください。
●8. (再掲)街の駅やまなし「乙女高原展」シーズン38は「乙女高原のチョウ」です。お近くに来た際には覗いてみてください。
https://blog.goo.ne.jp/otomefcact/d/20230707
●9. 全国草原の里市町村連絡協議会では、今年も「未来に残したい草原の里100選」選定記念フォーラムを開催します。10月12日(木)13:00~17:00、東京農業大学です。授与式・フォーラムには誰でも参加できますが、要予約です。
https://sato.sogen-net.jp/?p=3341
また,YouTubeによるライブ配信も行うそうです。こちらは申し込み不要です。
https://www.youtube.com/@sogen-net
●10. 環境省では、現場で実践する方や学ぶ方のヒントとなるよう、環境教育・ESDの実践の優良事例の動画を「環境教育・ESD実践動画100選」として選定し、優良事例のショーケースとして広く発信するそうです。
http://eco.env.go.jp/jissendoga/
応募期間は9月29日(金)までです。本事業の事務局は日本環境教育フォーラムが務めています。
●11. (私信)山梨CATVの「教えてうえちゃん いつでもどこでも自然観察」のユーチューブ・チャンネルです。すでに19本の自然観察動画番組がアップされています。今後、少しずつ増えていきます。ここからお好きな番組をご覧になってください。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLl4SoTwWyU5bYf0xy_SQYDvkeK8zu0yuC
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1. 【活動報告】●花と昆虫のリンク調査8月● 8月19日(土)
奥平純太くんがレポートを書いてくださいました。
今回の調査では高つき先生と一緒に調査しました。 今回はマルハナバチはヤマハギやノアザミに多くて、アブはほとんどの花にいました。また、びっくりしたのは、バッタが白い花を食べていたことと、マルハナバチがヤマハギに40回とまっていたことです。
今回は雨でと中で中止になってしまいました。そんな雨の中高原に行ったらマルハナバチがノアザミの花の下で雨宿りをしていました。また、参加したいです。
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2.【活動案内】●花と昆虫のリンク調査9月● 9月16日(土)
・9:40~ 雨の場合、翌17日(日)に実施。
・集合 乙女高原グリーンロッジ
・高槻先生の指導で、花を訪れる昆虫を見つけては、それを記録していくという調査です。
・弁当、水分、帽子、筆記用具、時計(腕時計や携帯電話の時計で十分)、できればカメラ。
・終わるのは15:00くらいになると思います。
・去年の調査については以下の動画を参考に。
https://youtu.be/FWgfos0N1SE/
※参加いただける方は、このメールに返信をお願いします。
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3.【活動案内】●植生調査● 9月23日(土)
・9:40~ 雨天決行 集合 乙女高原グリーンロッジ
・高槻先生の指導で、草原内のポールが立っている10箇所で生えている植物の記録を取っていきます。
・シカ柵設置後、植物たちがどのように「回復」していくのかを調べています。
・シカ柵設置直前から毎年1回、9月に行っている調査です。
・弁当、水分、帽子、筆記用具。
・おそらく終わるのは15:00くらいになると思います。
・去年の調査については以下のブログを参考に。
https://blog.goo.ne.jp/otomefcact/d/20220910
※参加いただける方は、このメールに返信をお願いします。
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4.【小 説】●虎を抱えた乙女● 宇津 貴史
俺は絶滅してかまわないよ、むしろありがたい。男は言った。頬に肉のついた柔和な顔から発せられた言葉だとは思えなかった。これまでに採ったM地区でのヒメギフの値段が上がるんだからな。男は標本商だった。高く売れそうな虫を求めて全国を回っていた。
この曲がり角は彼の採集ポイントである。この属のチョウが引き寄せられる青い網やビニールシートを枝に吊るし、発生地で羽化し、風に乗って上がってくる親チョウを彼は待ち構えている。去年もここで出くわした。
陽が出なければヒメギフチョウは望めない。出発前にも峠の天気をスマホで確認し、間違いないと確信した。だから、林道を何往復もしている最中には邪魔になるだけだとTシャツにウインドブレーカーを羽織っただけの服装でやってきてしまったわけだが、風が吹くたびに脇を締め、両手で二の腕をさすらなければならなかった。太陽の形はわかるものの空全体が薄くぼやけ、鳥の鳴き声も少なかった。
あんたのために絶滅なんて許されるわけない。言い返したかったが、採集が禁止されているわけではない。需要によって自ら仕事を選択し、悪政を嘆きながら人生をやりくりしているという点では、食品会社のサラリーマンや病院の看護師となんら変わりがなかった。むしろ、男の方が過酷に生きていると言えた。春から秋まで車中泊、雨の日の稼ぎは望めないのだ。北海道ではヒグマの森に入り込み、黒化型のオオイチモンジを採集するという。あのときはもうだめかと思ったよ。慌てながらもそっと車に忍び込み、窓から撮ったという写真を去年、見せてもらった。ほんの2m先の笹薮には、後ろ脚で立つヒグマの姿があった。男は賭けているのだ。晴れた気持ちの良い日にだけ高原に出かけ、柵の中で観たいチョウだけを追いかけているような甘さがなかった。その点では真剣にヒメギフチョウと向き合っていた。証拠に、峠の隅々まで把握していた。ポケットから取り出したくしゃくしゃの地図には、ヒメギフチョウの発生地、ウスバサイシンの群生地が詳細に記されていた。教えてやるから余所へ行ってくれ、これから四人の弟子が来るんだ。あいつらにも採らせてやらんとならんのに、仕事の邪魔だ。上空の雲が流れ、澄んだ青に広がっていた。
池袋に住んだ頃がある。都市部とはいえ、見つけようとすればチョウは見つかる。北口から繁華街を抜けた量販店近くで、年に数度はツマキチョウを目撃したし、エノキに産卵するゴマダラチョウを撮影したこともあった。赤羽の公園まで行くとコムラサキが樹液に集まっているし、板橋の河川敷を歩くとギンイチモンジセセリに出会えた。頻繁に通ったのは小石川植物園で、南下していくアサギマダラを池のほとりで見つけたときは嬉しくて、他の来園者にも教えたものだ。夏の終わりまでに東京で観察できるほとんどの種を撮影してしまうと、幼い頃に観たクジャクチョウの記憶を、蘇らせたいと思った。青空の下、アブがまとわりつくと、アザミの上に乗った黒い影が鬱陶しそうに翅を動かし、鮮烈な赤を見せる。その黒と赤の点滅は、光沢のある目玉模様をくっきりと引き立たせる。この峠に立ち寄ろうと決めた事の発端は、浮かんだこの絵だったのだ。
九月だった。他に車のない広い駐車場でエンジンを切ると、シータテハが素早い動きで横切った。花の匂いを含んだ風は心地よく、空は澄んでいた。その空を背景に、ススキの穂が揺れ、オミナエシやアザミが点々と色を添えていた。鹿対策のためだと説明を読んで錠を開け、高原内に入り込む。刈られた草の敷き詰められた道は朝露に濡れ、靴は蒸れたが柔らかく弾んだ。ひと夏を高原で過ごしたウラギンヒョウモンが破れた翅で先導してくれた。シシウドの花では丸々太ったキアゲハの幼虫が、来年の春を夢見て頭を擡げていた。この日、高原内を三周してもクジャクチョウとは出会えなかった。いや、諦めて帰ろうとしたとき、終わりかけのヒヨドリバナに真っ赤な色を見たのだ。一瞬でその色は消えた。冬が終わり、大型連休が近付くころ、再訪を決めた。ヒメギフチョウが観たかった。越冬から目覚めたキベリタテハにも出会いたかったし、まだクジャクチョウの撮影も済んでいなかった。春の高原はどれほど美しいだろうかと描いて車を走らせた。しかしそれは誤算だった。都内はすっかり初夏、ツマキチョウはとっくに過去となり、クスノキの周りをアオスジアゲハがせわしなく旋回しているというのに、林道はまだ冬期閉鎖されていた。高原に辿り着けもせずに帰るしかないのか? すれ違いスペースの隅に車を停め、歩きで高原へ向かうことにした。標高の低いあたりにはレンゲツツジが咲いていたものの、林道を進んでいくうちに、だんだんと季節が逆戻りしていった。コツバメが身を傾けて、まだ葉のついていない枝先でテリトリーを張っていた。白樺からは樹液が出ているのだろう、翔び立ったエルタテハが幹を回って同じ位置に止まり、歩け、と励ましてくれた。三時間かけて高原の手前のカーブに着き、ペットボトルの水をひとくち飲んだ。上着を脱ぐと、かいていた汗はその瞬間に乾いた。足は軽かった。だが、広い駐車場から高原を見て力が抜けた。歩いている間じゅう、タンポポやスミレがこぼれる風景を想像していたのだ。目の前に広がっていた高原は、刈られた草が敷き詰められている、いまだ冬そのものの姿だった。それでも、さらに歩いた。何もいないように映る風景だけれど、探せばヒメギフチョウが舞う姿を見つけられるのではないか。スミレだって枯れ葉に埋もれているだけで、よく見ればちゃんと咲いている。しかしこの日、空は急速に曇り、断念して元の道を引き返すしかなかった。車に戻り、エンジンをかけようとしたときだ、赤い点滅が目に入った。タンポポの上になにかがいる。クジャクチョウだった。近寄ると、地面に向けた頭を上下に動かして、盛んに蜜を吸っていた。翅は破れ、赤も褪せていたけれど、長い年月を経て観たクジャクチョウだった。
いまは高尾に住んでいる。高原との距離は近くなり、時間があれば出向くようになった。キベリタテハは自ら手に乗ってきたし、ツマジロウラジャノメやアカセセリも撮影できた。なによりも高原の季節の変化にすっかり魅せられてしまった。ヒメギフチョウは目撃こそできたものの、撮影できずに三回目の春へと持ち越された。
さっきまで身震いするほどの気温だったというのに、上空に固定された太陽によって汗は背を伝い始めた。湿っぽい標本商のメモを取り出し、道なき道に入り込む。春とは言っても、大半はまだ落ち葉の内に眠っている。あとひとつきもすれば葉が繁茂して、暗さのなかに閉じ込められてしまう沢伝いの斜面も、いまは枝と枝の隙間から射した陽が林床に落ちている。よく見ればスミレの小さな青が点々とみつかる。スミレでは翅を広げたミヤマセセリのメスが頭の向きを変えながら蜜を吸い、やってきたオスに追われて空間に紛れていく。陽だまりからは冬から目覚めた、色褪せたスジボソヤマキチョウが翔び立ち、再び陽だまりに止まるが、いったん目を離してしまうともうどこにいるのかわからない。マイヅルソウばかり目に入る。そうだ、ウスバサイシンを去年みつけたのはマイヅルソウの群落だった。水は枯れてはいるものの流れがあったと思われる周辺を探していると、朽ちた倒木の陰にようやく見つけた。魔女がスープにでもしそうな、花らしくない黒い花を地面ぎりぎりに咲かせている。ここで待っていればメスが産卵に寄るかもしれない。今年は春が早い。
陽当たりのよいエンゴサクが群生している場所は、周辺を見渡すにも都合よい。苔が生え、滅し、を繰り返したであろう石に尻をのせて待つ。頭の中では翅を広げたヒメギフが、長いとは言えない口吻をせわしなく花から花へ伸ばしている姿を想像している。産卵前のメスが近くを通ったら、蜜を吸っていくに違いない。音をさせないよう近付いて撮影するためには、太陽の角度がどの位置だったらいいだろう。落ち葉に寝転んで試してみる。
尾根の方から落ち葉を踏む音に身が硬くなった。鳥が飛び立つ音なんかではない。鹿? いや、 臆病な鹿は怯んでいったんは止まっても、すぐに走り去って消えていくものだ。では熊か? 落ち着け、ヒグマじゃないのだ、恐れるな。目だけを開いて動かずにいると、青いジャンパーの男が斜面を滑ってきた。
「尾根で粘っていたけど全然ダメ。ここはどうだい?」
眼鏡をかけた丸顔には見覚えがあった。去年、ヒメギフの南限はM地区で、だからこそ採りたいと語っていた、春になるたび九州から採集に通っている男だ。定年以来、昆虫少年だった時代を思い出して、再び網を振り出したという。わからないわけではない。自分だって虫に興味を持ったきっかけは、捕虫網のおかげだ。引越して友達と馴染めないでいた幼少期、いまは亡き祖父が、いまは無き空き地に連れ出してくれた。巣から落ちたスズメの雛、交尾しているモンシロチョウ、カマキリが捕らえるアキアカネ、全部このときに学んだものだ。しかし、時代も事情が違う。そう思いたくなってしまうのは、自己都合で判断しているにすぎないのだろうか。
けれどこの男は視力も網を振る腕もいまいちで、去年は一頭も採集できなかったはずだ。少し安心した。男は右手を上げ、親しい者に話しかける態度で接してきた。
「今年は全体的に発生が早いからね。もう産卵しているかもしれないとウスバサイシンをひっくり返しるんだけど、卵がないんだよ。それどころか昨日いた若い男とね、上にいる標本商、ふたり、採集しているメスは全部、未交尾だってさ!」
それではこの場所で、産卵しにくるメスを待っていても意味がないではないか!
エンゴサクの群落を諦めて尾根を歩き、再びウスバサイシンに帰る。行ったり来たりと二時間ほど付近を探し回ったが、ヒメギフは現れなかった。これほどまでに見つけるのが難しいのだ、標本商も断念したかもしれない。林道の頂上まで戻ってみると、標本商はまだいた。足を組み、余裕の表情で折り畳み椅子に座っていた。すでに四頭、昨日と合わせて十頭採集したらしい。そんなことがあるはずない。発生地から飛来するポイントまで、情報を得ておいて彼を批難するのは間違っていた。それでも、採り過ぎだと思えてならなかった。採集したメスが全部未交尾なら、その個体の産み付けた卵はひとつもないわけで、来年はますます少なくなっているだろう。それでも標本商はやって来て、曲がり角のポイントに青い布を張って頑張るだろう。彼を避け、枯れススキをなぎ倒しながら進んだ。新芽がいきいきしているカラマツの枝ではシジュウカラが騒いでいた。ダムから上がってすぐの辺りでは柳の花もダンコウバイも見頃なのに、頂上のここでは開き切っていなかった。桜ももう少し時間がかかりそうだった。その桜の下には、車が二台停まっていた。タラノキの生える斜面に男たちがいた。標本商の弟子たちに違いなかった。このやろう。口に出さずとも放っていた気迫を感じ取ったのか、そのうちのひとりが振り返った。目の鋭い男だった。そして、わざとらしく大声で、本当に少なくなったよなあ、鹿のせいだ、鹿が幼虫ごと食べてしまうことが原因だよ。そう仲間に訴えかけるように言い、仲間も同調した。一瞬、原因としてはそれもあると思いはした。しかし、それは方便でしかなかった。子を残す確率の高さは、幼虫よりも親蝶のほうが高いのに、それを根こそぎ採りつくそうとしているのは彼らなのだから。
彼らに対して怒りの感情が湧き出てくると同時に、自分の欺瞞に対しても嘆きたくなった。車での移動中、オニヤンマやウラギンシジミを跳ね飛ばしておいて被害者気取りか? カブトムシがいっぱいいた柳の沼が埋め立てられてショッピングモールとなり、喜んで買い物しているのはおまえだぞ。彼らといったい何が違うんだ? 溜め息を知りもせず、陽気なキタテハが二頭、枯れススキの内側から出てきては追いかけ合っていた。
この日の二時過ぎ、それは風の吹いた次の瞬間だった。何かが足元に降り立った。虎模様が翅を広げている。ヒメギフチョウだ。報われた、やってきた甲斐があった。一枚だけでいいのだ、一枚だけ撮らせてくれ。近付こうと足を踏み出したとき、すでに虎模様はそこにいなかった。枯れ葉の音で高く舞い上がってしまったのだ。いったんカラマツの枝先に止まったものの、次の風が吹いたときにはもう、流れに乗って翔んでいた。もうここへ戻ってくるなと念じた。
九州の男はとっくに、今年も駄目でしたと挨拶して去っていった。気付けば標本商とその弟子たちの車もなくなっていた。粘った午後四時近く、落ちていく夕陽を浴びて白樺の幹からエルタテハが宙を滑って下りてきて、辺りを旋回したのち、肩に止まった。撮影もできなければ、一緒に笑ってくれる者もいなかった。やがてエルタテハは白樺の幹に戻って二度と舞い降りず、今度こそ本当にひとりきりになった。
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■2023年度 第8期 乙女高原観察交流会■
●乙女高原ファンクラブとしての行事でなく、参加者各自の自主的活動として行うもので、活動に伴う旅費や飲食、傷害保険などすべて自己責任となります。
●途中からの参加や、午前中だけの参加など自由ですが、解散時間の目安は、現地3時、道の駅3時半とします。
●雨天の場合などは現地には行かず、道の駅での交流会にしたり、早めに散会するなど、参加者各自の意思で決めてもらいます。
●参加者は、乙女高原ファンクラブのメルマガメンバーとしますが、お知り合いを同行されることは自由です。
●乙女高原観察を通した交流目的のため、参加者間で情報を共有できるように、乙女高原ファンクラブ世話人会の了承のもと、メルマガなどを利用させていただきます。
※今後の予定
⑦10月07日(土)集合:09:00・道の駅
⑧11月11日(土)集合:09:00・乙女高原 兼:草刈り準備
⑨12月02日(土)集合:09:00・道の駅
【2024年】
⑩01月06日(土)集合:09:00・道の駅
⑪02月03日(土)集合:09:00・道の駅
⑫03月02日(土)集合:09:00・道の駅
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■街の駅やまなし・乙女高原展■
中央線山梨市駅すぐ北(北口から出て、すぐの信号を渡り、北に向かって歩いてください。郵便局の北です)の「街の駅やまなし」には常設の乙女高原コーナーがあります。
https://www.city.yamanashi.yamanashi.jp/citizen/docs/yamanashi_02.html
現在、シーズン38「乙女高原のチョウ」の展示をしています。
https://blog.goo.ne.jp/otomefcact/d/20230707
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