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乙女高原ファンクラブ 公認
乙女高原メールマガジン 第302号 2014.2.6.
発行者:植原 彰(乙女高原のある山梨市牧丘町在住)
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NEW! 0.【ニュースニュース】
NEW! 1.【活動報告】第13回乙女高原フォーラム その2
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0.【ニュースニュース】
●1.山梨では立春の日,ボタン雪がドカンと降りました。この時期に特徴的な雪です。ここ1年以上,ほぼ1週間おきに乙女高原に通っていましたが,ここ2週間行ってません。新雪の乙女高原へ,行きたい・・・・。
●2.(再掲)『乙女高原大百科』,好評発売中です。1冊2,000円(実費)。手渡しできない場合は送料が必要で,1冊なら350円。ですから,1冊なら送料込みで2,350円ということになります。郵便振込でご送金ください(別途手数料がかかります)。複数冊欲しい方,送料については要相談です(先日,2冊でも送料350円で送れることがわかりました)
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郵便振替口座等は以下の通りです。
・口座番号 00220-8-71093
・加入者名 乙女高原ファンクラブ
●3.(再掲)次回の乙女高原ファンクラブ世話人会は2月26日(水)午後7時半から9時まで牧丘総合会館で行います。ファンクラブ会員であれば世話人でなくても参加できます。ぜひ,おいでください。
●4.(再掲)3月16日(日)午後2時からはファンクラブの総会を行います。会場は同じく牧丘総合会館です。総会後の座談会では,話題提供者を内藤邦雄さんにお願いすることにしました。内藤さんはファンクラブはもちろん,ほかにも様々な環境活動をされています。ヴァンフォーレの試合会場での環境活動もです。ご期待ください。
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1.【活動報告】●第13回乙女高原フォーラム● 1月26日(日)
その2 大分の足立さんによる『テンの目に写る乙女高原の自然』
いよいよスペシャルゲスト足立さんのお話です。ファンクラブ世話人の小林さんによる講師紹介の後,お話の始まりです。(文責 お話のまとめ 植原)
【プロローグ 哺乳類を切り口に,自然の情報を得たい】
・哺乳類のなにかを切り口にして,自然の状況を把握できないか,それを自然の保全に結びつけられないか? それがそもそもの始まりでした。あるダム計画があり,その川を徹底的に歩いたのですが,そのときに糞を集めはじめました。最初はイタチの糞もテンの糞も見分けがつきませんでした。
・最初に拾った糞は19個。それを紅茶用の茶漉を使って水で漉し,出てきたものを分析しました。夏だったので昆虫の破片が多かったのですが,昆虫って脚だけではそれが何なのかわかりませんでした。
・水洗いしたほうが楽なのですが,それだと情報も一緒に流してしまうことに気がつき,乾燥したまま分析する方法に改めました。必然的にマスクをします。ほこりがたくさん出るからです。
・昆虫ばかりでなく,植物の中にもやっかいなのはありますよ。サクラの仲間とか。
【テンとはどんな動物か?】
・テンはその気になると,身近な場所でもみることができます。夜行性の傾向が少し強いです。
・冬毛がきれいなんですが,それで襟巻きとして活用されていたことがあります。
・佐渡でゲージの中のトキを襲ったのもテンで,非常に獰猛だと誤解されているところがあます。
・やんちゃぼうずって感じの動物です。ネアカなヤツです。
・テンの仲間で川を選んだのがカワウソで,さらに進んで海を選んだのがラッコです。
・イタチは地表を選んだ仲間で,2次元的です。九州にはチョウセンイタチもいて,糞で見分けるのがやっかいです。イタチはテンよりも河川をやや多く活用しています。一方,テンは木登りも得意で3次元的と言えます。
・アナグマは土に穴を掘ることができます。土の中を選んだ仲間です。
・テンは肉食でもありますが,植物もよく食べます。ドングリは食べませんが,液果類の木の実は大好きです。
・なぜテンを調査対象にしたかというと,全国に普通にいるから,子育ての時以外糞は明るい開けた場所にするから(見つけやすい),雑食で動物(ネズミが大好き)も食べるが植物も食べる(サルナシが大好き)から(住んでいる環境の動物も植物もテンの糞には反映する),などです。
・木登りが得意な動物なので,森への依存傾向が強い。低地から高地まで・九州から北海道まで住んでいる。いろいろと多種多様な食べ物を食べている。明確ななわばりは持たない。人との関わりは低い。糞を利用すれば,比較的簡単に調査ができる。以上の理由で,テンはその地域の環境指標種として使えるのではないかと考えました。
【糞を調べるのはオモシロイよ】
・動物の行動を追跡するには,捕まえて,麻酔をかけて,電波発信機を付けて逃がし,その電波がどこから発信されるかを追跡する調査をするのですが,これは結構たいへんで,しかも,テンに大きなストレスを与えてしまうので,他の方法でやりたいと思っていました。糞は彼らのコミュニケーション・ツールとして使われているという話もあるんですが,直接,個体に影響を与えるわけではないので,糞による分析を続けています。
・実際に乙女高原で拾われた糞の中には「本当にテン?」と疑問を持つものもありました。そういうものはデータの中には入れていません。
・テンの糞の中には骨があったり毛があったり,種が入っていたりします。
・植物の種については,実がなっている時期に調査に入ったら実際に木の実をとって,中の種を取り出して保存しておき,それと照合するようにしています。動物系の内容物についても,同様にしています。
・動物の毛は,乾燥して硬くなったやつを,水にひたして柔らかくし,ほぐしてから分析します。すると,ネズミの毛の中にシカの毛が混じっていたりします。
・分析していると,それが何なのかわからないものがたくさん出てきます。それらを再分析できるように,サンプルは全部保管しています。
・テンの糞を調べていて,意外だったのは,テンの糞の中に黄色いかたまりがあったことです。はじめは何かわからなかったのですが,車道に落ちたツバキの花を車が踏んだ痕があって,「これだ!」と思いました。テンはツバキの花を食べていたんです。きっと蜜が甘いからだと思います。花びらは消化されてしまうのですが,おしべの束と花粉が残って,黄色い糞になったんですね。「黄色いかたまり」のデータを「ツバキ」と置き換えることができました。
・もう一つ,わからなかったのは,どうみてもスポンジにしか見えなかったものの正体。やっぱり,あるときに「これだ!」と分かったのですが・・・カマキリのたまご。カマキリのたまごを食べていたんですね。
・ハチの巣もやっかいでした。ツバキの花もカマキリのたまごもハチの巣も,こっちが想像だにしてなかったものだったので,分かるまでに時間がかかりました。
【乙女高原の調査結果】
・2006年から2012年までの7年間に採取したテンの糞は756個。調査回数はほぼ17回/年と安定していますが,サンプル数が2年ずつ減ってきているかなーという感じがします。糞の数が変動するのは,他の場所でも観られる傾向です。
・月別サンプル数をみると,2月,6月,9月が少なくなっています。2月は雪のため見つけにくい。6月は梅雨のため,雨で糞が流れてしまう。9月は端境期かなと思います。
・冬から春,春から夏にかけて動物の割合が多いのですが,秋から冬にかけては植物の比率が大きくなります。
・動物類の出現頻度を観てみると,ノネズミと昆虫類の比率が大きいです。昆虫類はそれを狙って食べているというより,歩いていて,いたから食べた・・・という感じで食べているのが多いように思われます。
・季節ごとに観てみると,春から夏にかけてはがぜん混虫類が多く,冬から春にかけてはネズミ類が多くなります。この時期モグラも比較的多くなります。モグラは臭くて,イタチやテンは食べないのではないかと思われていますが,このように結構食べています。糞の中にモグラ類の毛が入っていると,すぐにわかります。ベルベットみたいな,特徴的な毛です。ウサギがもっと食べられていていいかなと思うのですが,出てきませんでした。
・植物については,他の場所に比べて,やや貧弱な感じがします。簡単にいうと,サルナシとヤマブドウだけという感じです。春から夏にかけてイチゴ類やサクラ類が出てきます。これらは冬を越して最初に出てくる木の実なので「待ってました!」のはずですが,あんまり出てこない。
・秋から冬にかけてサルナシとヤマブドウが圧倒的に多くなるのは乙女の特徴です。群馬の赤谷でもサルナシがいっぱい出ますが,ペアになっているのはヤマブドウではありません。サルナシもヤマブドウもつる性の木です。ですから,林の縁や渓谷で多く観られます。とにかくテンはサルナシが大好物です。九州ではサルナシとカキが出てきます。
・場所別に観てみると,ノネズミ類は大窪山フィールドでよく出ています。ここは樹林帯だと思います。湿地でもよく出ますが,草原はだめですね。焼山は一度伐採されていませんか? 疎林?? 伐採されて少し時間が経っていると思います。
・九州だとテンが食べるネズミはほとんどがヒメネズミかアカネズミという森林性のネズミです。ところが,乙女高原ではヤチネズミ系・・・たぶんスミスネズミが入っています。スミスネズミのほうが半分より多いくらいです。
・ノウサギは少ないです。
・モグラも草原に少ないです。なぜかわからない・・・。久住だと草原のほうにモグラが出るのですが・・・。
・大型獣としてはシカですが,湿地が一番多くなっています。湿地に集まっている感じがします。シカの餌となるような植物が春一番早く出てきますし,シカが好むような植物が多いのではないでしょうか。
・鳥類は草原が一番低くなっています。樹林部に多くなっています。
・湿地では昆虫も多いです。
・昆虫類について調べてみると,夏は甲虫(カブトムシの仲間)とカマドウマが多いです。
・セミもよく食べています。羽化するときに土の上に出てきますね。それを狙います。セミを集中して狙う時は,糞がセミだらけになります。
・秋はカマドウマが多くなります。
・大窪山も焼山も同じような森に見えるかもしれませんが,テンの糞の内容物分析からみると, 焼山のほうは伐採の影響がまだ利いていると思います。
・湿地は大型獣も昆虫も多く,しっかりとした湿地なんじゃないかと思います。
・草原は貧弱ですね。全体的に少ないです。
・植物をみると,焼山のサルナシがダントツ多いです。焼山には沢が入っているのではないかと予想しています。ヤマブドウは大窪山のほうが優勢です。
・大窪山はいろいろな植物がまんべんなく出てきているというイメージです。焼山はサルナシです。サルナシが突出しています。大窪山には出てくるけど,焼山には出てこない植物が観られ,(テンが食べる)植物類が欠落しています。
・湿地もいろいろなものが出てきていて,テンに食料を提供していると思います。
・草原は出てくる植物も少ないし,頻度も少ないです。
・まとめると,
●全シーズンを通じて動物類が中心。中でもネズミ類が優占。昆虫類では甲虫をベースに夏季のセミ類,秋季〜冬季のカマドウマが目立つ。
●食べている植物としては,秋〜冬季のサルナシとヤマブドウが特出。他は貧弱。
●『森林』『渓谷』『湿地』という環境要素が大きく響いているように感じる。
〇大窪山は動物ではネズミ類優占。全体の中では出現頻度も高く,採餌バランスは良い。
植物は19種と多いが,全体的な頻度は低い(依存度が低い?)
〇焼山は動物では昆虫類がやや多い他はいずれの種群も大窪山より少ない→やや不安定な環境?
植物ではサルナシ特出→林縁.渓谷環境(ガレ)
〇湿地は動物ではネズミ類・大型哺乳類が焼山より多い!昆虫類は調査地で一番。甲虫,セミ,カマドウマ。
植物は18種と多く,サルナシの他サクラ類の頻度も高い→落葉疎林の存在?
〇草原は動物・植物とも,いずれの種群も貧弱
【佐渡ヶ島のテン】
・2010年に特別天然記念物トキのケージにテンが侵入し,テンがトキを襲うという事件が発生しました。
・ケージにすきまがあって,そこからテンが侵入したというケージの不備は見つかったが,テンがトキを襲ったからには,その環境に何か理由があるはずです。そこで,ここでもケージ周辺のテンの糞を調べてみました。
・すると,糞の中の動物では両生類(カエル)が突出しています。こんな箇所は初めてです。ここのテンは他の場所のテンと違ってカエルをたくさん食べていました。植物では,乙女高原と違って夏のカスミザクラと秋のカキがダントツです。佐渡にはおけさ柿という柿の品種があります。ケージの周辺では果樹園があり,この柿をいっぱい植えています。だから,カキが多いというのは納得できます。佐渡全体だとサルナシも当然のように出てきます。
・ケージのある地区では,8〜9年前からトキの復活を目指した環境整備が行われました。休耕田が復元され,深い池は浅くし,江(添え畦付)・水路なども整備し,冬でも水が枯れず,トキが餌をとれるような場所が多くなりました。これはカエルにとってとても好都合。カエルが集まり,カエルが増えました。
・カキがなくなり,食べられる植物類も限られてくる3月は,カエルばかりを食べているらしく,全サンプルの68.9%がカエルでした。つまり,トキのために行った水環境整備が,テンやホンドイタチに餌を供給することになり,テンをケージに『呼び寄せてしまった』可能性を示す結果となりました。
【赤谷地域(群馬県みなかみ町)のテン】
・糞の中の植物をみると,サルナシが突出しているのは乙女高原と同じですが,もう一つ多いのはヤマブドウではなく,ツルウメモドキです。ツルウメモドキを食べたことある人,いますか? まずいですよね。ツルウメモドキが出るのは冬の間ですが,仕方なく食べている可能性があります。
・動物をみると,乙女と同じくネズミ類と昆虫が多いです。
・結果をまとめて「赤谷地域のテン食物カレンダー」を作成しました。
・サンプル数の季節変動のパターンから,テンが季節によって移動している可能性を確認しました。
【背振(せぶり)地域(九州/ブナ・アカガシ帯)のテン】
・動物の中で,ネズミ類は乙女高原などと比べると少なく,昆虫類が多くなっています。ネズミの中でもヤチネズミ類が少なくなっています。
・植物では,サルナシが多いのは同じですが,乙女のヤマブドウ,赤谷のツルウメモドキのように,もう一種類多い植物があるというより,いろいろな植物が食べられています。
・九州のいろいろなところで調べていますが,常緑林(シイ・カシの森)にはテンがあまりいないですね。テンが食べている木の実が少ないのかもしれません。人里タイプの中でも,観光地になっていて,人為圧が大きいところは少ないのですが,そうでないところにはテンは結構住んでいます。川に沿っては多いですね。それぞれの場所で糞の中身の表やグラフを作ると,そこから特徴的なパターンが読み取れます。
・テンの移動範囲はせいぜい半径500m。だから,そこの環境を反映しやすい動物だと言えます。
・人は,自然の評価をしようと思っても,人間側の視点でしかできません。テンの視点を持ち込むことで,同じ自然を観ていても,少し違った景色(評価)が見える(できる)かもしれません。なかなか難しいですが,延々とそれを続けています。 (足立さんのお話 終わり)
【Q】加古さんに質問です。チョウとお花の関係ですが,チョウの幼虫が食べる草を考察しましたか? たとえば,草原の草を食べるチョウの幼虫がそのまま草原で成虫として暮らすとか。
【A】わたしの研究はチョウが花に止まっているのを記録するということでした。いろいろなチョウの種類はありますが,チョウというカテゴリーでくくってしたので,そこまで詳しい分析はできていません。もっと踏み込んだ調査をするといいと思います。
【Q】足立さんに質問です。テンの糞を4エリアに分けて解析していましたが,テンというのは食べてすぐに糞をするのですか? 人間なんかだと次の日くらいに出てきますよね。そうなると,食べたあとで移動して,別のエリアで糞をしている可能性もあると思います。そこで見つけた糞がそこの環境を反映しているという根拠はなんですか?
【A】たしかに調査地が隣接しているのでやっかいですね。動物がどのくらいの時間をかけて食べたものを消化して糞として出しているのかを調べるのは難しいですが,早いもので1日かからないです。また,定住タイプのテンは動く場所がだいたい決まっているのでいいんですが,やっかいなのは,よそから入ってきて糞をしているヤツです。たぶんそのような『ノイズ』を拾っていると思います。ですが,大筋,テンはそんなに移動経路を頻繁に変えるようなタイプではないので,食べたものをそこに(糞を)出していると考えています。一番わかりやすいのは,その地域に1本しかないような木の実がなって,その実が入った糞がどこで観られるかというと,その木の下なんです。特にある実がなったりしたときにはそこに集中するので,動きませんね。
【Q】せっかく6年7年も調べているので,年次変化がどうだったかも明らかにするとよいと思います。特にシカが以前は出てこなかったのに,ここのところ出てくるようになった・・・というようなことはありませんか?
【A】そういう傾向はあります。じつは赤谷でも同じような期間調査をしているのですが,初期の頃大型獣は出てきませんでした。ここ数年多くなっているのですが,赤谷で多いのはカモシカとイノシシです。それにシカが入り始めているところです。データ解析をしているわけではありませんが,乙女高原でも同じような傾向が出てくるのではないかと思われます。
【Q】湿地でシカが多いことについて,湿地にシカが食べにきていると分析なさっていますが,テンが食べているのは死体ですよね? そうなると,湿地でシカが多いのは,シカが集まるからではなく,湿地で死体が得やすいということですよね?
【A】そういう意味だと思います。
【Q】テンが食べているネズミの説明をしてくれますか?
【A】わたしがメインのフィールドにしている九州にはスミスネズミはおりませんので,このネズミのことはよくわかりません。九州の草原ではハタネズミがよく出ます。ハタネズミは森林ではなく,草原にいます。アカネズミはだいたい森のネズミですが,まあ,どこにでもいると思ってください。ヒメネズミは森のネズミです。スミスは森にも草原にもいると思うのですが,九州の草原にいるハタネズミはそんなに食べてなくて,テンが食べているのはもっぱら森林性のアカネズミやヒメネズミです。テンはそもそも草原をあまり利用していないのだと思います。北にくるとスミスネズミが多くなると思うのですが,ネズミ類だけをつっこんで研究しないと詳しいことはわかりません。
【Q】テンはどれくらいの標高までいますか?じつは標高2800mの山小屋にも冬,テンが来て,小屋の中のお菓子を食べるなどして荒らされることがあります。
【A】海岸から尾根までいます。とても広い分布域です。いないのは都市部くらいだと思います。ただし,森林限界を越えて観られることはあまりないと思いますので,2800mの山小屋のお菓子を食べるなどして荒らすとなると,テンの仲間のオゴジョなどではないかと思います。
【Q】櫛形山でテンの糞を調べている団体を知っているのですが,テンの糞かイタチの糞かを判定するのに直径7oという判断基準でやっていると聞きましたが,乙女高原のサンプルはどんな基準で見分けていますか?
【A】基本的には形と大きさです。においというのもありますが,新しいやつはにおいますが,古いやつはにおいません。一番分かるのは,さわるとわかるんですが・・・どう説明すればいいんだろう・・・子どももいますから,大きさだけでは判断できません。木の実を食べた糞だと特にはっきりするのですが,イタチの糞は表面がすぐに硬くなります。ところが,雨が降ると,イタチの糞のほうが流れて,残りません。触った感じがテンの糞のほうがさっぱりしています。イタチは粘る感じです。判別に迷う場合は,10項目くらいの判別項目リストがあって,それによって見分けています。それでも分からないものはでてきます。それははじいて,データの中には入れていません。とはいえ,サンプルは残しておきますから,後日,判明したら,データの中に入れていきます。
【Q】登山していると道でテンの糞をよく見かけます。やっぱり明るい開けた場所で糞をするものなのですか?
【A】理由はよくわかりませんが,結果として明るい場所,特に林道などでよく見つかります。草原でローラー作戦を実施し,ある範囲内の草原にテンの糞がないか調べましたが,出てきません。やはり林道のようなところで出てきます。ただし,子育てしているときだけは,営巣地のまわりにします。明るく分かりやすい場所に糞をするのは,糞を仲間とのコミュニケーション・ツールとして使っているという研究もあるのですが,まだよくわかっていません。
【Q】おけさ柿って渋柿だと思うんですが,それでもたべちゃうんですか?
【A】全部ヒトが取ってしまうわけではなく,残って,熟したのを食べています。とはいえ,渋くても食べている可能性もあると思います。
【Q】テンは森林と結びついているという話で始まりましたが,聞いていくと,林の縁や沢の果実をよく食べるということなので,テンは森の中というより森の縁を利用している動物ということがわかりました。その場合に,保全生態学的なことも含めていうと,『テンは森林を指標する動物だ』という位置づけは,たとえばツキノワグマとは違うわけで,その辺をどう考えますか?
【A】植物で考えると林縁の果実が多いし,種子分散にも関わっていると思うのですが,ネズミやリスや鳥を普通に取っています。たぶんテンが一番好きなのはネズミで,ネズミが住んでいるのが森なので,テンは森の動物というとらえ方をしています。植物の中でも,サクラのように森の中に生えているものも食べますが,植物のメインは林縁部の木の実ですね。
【Q2】テンは手足が短くて,胴が長い。立体的に空間を使う。とすると,林にべったりな動物ではなくて,秋には林縁に出てきたり,沢に出てきたりと,日本的というか多様な環境を季節によって使い分けているととらえたほうが,より実像に近いのではないかと思います。
【A2】おっしゃる通りだと思います。調査を始めたのが森だったので,はじめのイメージが付いてしまっているのかもしれません。
【Q3】今日は多田さんはいらしていないようですが,今度は植物の側からいうと,もしかすると,サルナシはテンに食べてもらうような果実を進化させてきたかもしれないくらいだなと思えます。
【Q】加古さんがシカ柵の中と外で調べたら100倍も花の数が違ったという結果がありました。つまり,この3年間で花が1/100になっちゃったということです。とはいえ,彼女が乙女高原で調査したのはたかだか2年間。乙女高原を長く見つめてこられた人たちはどんなふうに思われましたか?
【A1】確かに昔は花がいっぱいで,アヤメの花も草原が紫になるくらいいっぱいありました。今は花はほんとに少ないです。
【A2】初夏はアマドコロが群れて咲いている,秋はマツムシソウの海と表現していいくらいマツムシソウが咲いていました。定量的に100倍よりどうだったかというのは難しいですが,印象としては100倍なんてもんじゃないよと思います。
【A3】わたしが乙女高原に関わるようになって,ちょうど10年になりますが,1年目はとにかく花がいっぱいでアサギマダラが乱舞しているという強烈な印象が残っています。2年目からアマドコロやアヤメが少なくなり,3年目はほとんど観られなくなったと思います。シカの被害がひどくなったのがここ4・5年。うまいものから食べていくから,だんだんいろいな花が少なくなってきました。
最後にファンクラブ世話人の内藤さんからお礼のことば兼諸連絡をしていただき,第13回乙女高原フォーラムをお開きにしました。
片づけ終了後,その場で茶話会。一人一人が自己紹介兼自己ピーアールをし,なごやかにお茶を飲みました。
いつものフォーラム報告なら,ここでお終いなのですが,今回はゲストの足立さんをその晩泊まる岩下温泉までお送りし,なんと一緒にお泊まりしてしまいました。温泉の本館(新館)の隣に別館があるのですが,それはなんとなんと明治時代に建てられた由緒正しい温泉宿でした。風格のある玄関を上がると,歴史を感じさせる廊下。温かいお風呂もありましたが,頭をぶつけないように半地下への階段を下りると,そこに広いお風呂。「こりゃいい」と,ざぶんと入って,後悔しました。ここは源泉そのままのお風呂で,水温はなんと28℃。28℃というと,夏のプールの水温です。とてもじゃないけど冷たかったです。夜は足立さんとワインや日本酒を楽しみました。足立さん,今度来たときには乙女高原をゆっくり案内しますからね。
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