東京藝術大学において美術解剖学(コスメトゥーラ)の一般講演生まれ育った都会の喧騒から離れ30年が経過した。山梨市のアトリエと東京の江古田を往復している。
30代前半から山梨県立宝石美術専門学校で実技指導の素描をはじめ近代デザイン史、生体機能論、西洋工芸史の講義を行う。
40歳、非常勤講師をしながら山梨大学大学院美術教育専修を卒業「マニエリスムの筋肉表現について」修士論文を著す。
制作実践から発見した試論を2011年東京芸大で開催された第18回美術解剖学学会「科学と美術」において一般講演にて発表する。
おもに16世紀のマニエリスム周辺の西洋美術を中心に描画と併用して研究を続けている。
造形理論については国立歴史民族博物館・お茶の水女子大学名誉教授の坂本満先生に師事。
「視覚における快楽」は必ずしも「美」とは言いきれない。
人間の深層心理には「デジャブ的なある種の恐怖」を欲する感覚がある
一度見たら忘れられない印象、たとえば、それはゴヤの一連の版画
「ラ・カプリチョス」のサバトの集会に存在する印象に似ている。
見てはいけないものをみた直後、(これから何が起こるのだろうか
恐怖の予兆に震撼とする感情、)体は硬直し、みじろぎもできない。
日常にありふれた事例を看過し忘れようとする
すれ違いざまに、思わず振り返ってしまうような好奇心は誰しもある。
ベラスケスの小人の肖像や、映画のノートルダムの傴僂オトコをはじめ
地獄草子や餓鬼草紙に登場する人々、レオナルドの手稿に描かれたグロテスクな顔
整合性を求める公的な美から、かけ離れた異端で私的な部類。
人間の本来持っている動物的本能は、倫理の被膜に包まれて抑制され
子供の持つ好奇心と恐怖に対する感情は欲望以上に大きい。
やがて成長という社会的時間とともに薄れていてしまう。
私はこの深層にある感情を、瞬時に惹き起こすモチーフとテクニックの探求を試みている。
その方法として16世紀マニエリスムにおいて「奇想の概念」が肯定されたことに着目した。
エキセントリックな身体表現は美術解剖学の視点で追及し、歪曲(デフォルメ)や、筋肉を過剰に加筆した巨匠(オールドマスター)の版画も参考に自作に融合(フュージョン)させている。
さらにオリンピアに登場する均整のとれた理想的身体を用いることで男女の性差をなくし裸像の持つエロスの感覚は消去させている。